懐かしい「子供番組」の歴史で見えたテレビの課題 動画配信時代に埋没しないために必要なこと

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テレビが一家に1台だった時代、子ども番組は家族で楽しむ1つのジャンルだったように思う。一方で、学童年齢に満たない子どもに向けた番組は、午前から日中にかけて広がっていった。

代表格はやはり「おかあさんといっしょ」(1959年・NHK)だ。スタジオに子どもたちを集めての歌あり体操あり人形劇ありの構成は不変で、偉大なるマンネリといっても差し支えない。今は独壇場のようになってしまったが、1960~70年代は同種の番組が競って放送されていた。

「ロンパー・ルーム」(1963年・日本テレビ)は「教育・遊び・おやつ・絵本」という本家アメリカの番組スタイルを踏襲したもの。また「おはよう!こどもショー」(1965年・同)はショーと名乗るとおり娯楽色が強め。「ママとあそぼう!ピンポンパン」(1966年・フジテレビ)は「おかあさんといっしょ」よりさらに開放的にといった具合で、それぞれ平日の異なる時間帯で個性を磨いた。

やや遅れて「こどもワイドショー ブンブンバンバン」(1973年・名古屋放送=NET系列、現名古屋テレビ)、「あそびましょパンポロリン」(1973年・NET)も参入。「ブンブンバンバン」は2年で終了したが、ほかは1970年代の子どもたちのよき仲間として歩んでいった。

これらスタジオ参加番組のほかにも、教科学習に準ずる内容をナンセンスなコントを交えて伝えた「カリキュラマシーン」(1974年・日本テレビ)や、社長肝いりで幼児番組研究を重ね、万全の体制で開始した「ひらけ!ポンキッキ」(1973年・フジテレビ)などがあった。

このうち、1980年代以降を生き延びたのは「おかあさんといっしょ」と「ポンキッキ」。そして「ポンキッキ」を生むきっかけとなったアメリカ制作の「セサミストリート」(1971年・NHK教育)だけ。「おかあさんといっしょ」も1985年に夕方の再放送が、1998年には朝の本放送も教育テレビに移行している。「ポンキッキ」も1993年に「ポンキッキーズ」と改題後は対象年齢を上げて大幅に内容を変更、放送時間移動も頻繁になり2007年に終了。以後はBSフジでの放送となった。

異色だった「こども世界ニュース」

ここでは軽くニュース・情報番組にも触れておく。ラジオの時代からのNHK「子供の時間」にはニュースが含まれていた。ニュースといっても子どもになじみやすい、いわゆる「話題もの」がほとんどだったと言われているが、これは民放ラジオ、テレビでも開局当初から同様の番組は作られていた。

そのなかで異色だったのは「こども世界ニュース」(1962年・NET)だ。放送時間は午後4時台から6時台で安定しなかったが、世界各国の事情を伝えるものまで含め、硬軟とりまぜた内容をわかりやすく伝えようとするものだった。1973年にNETは教育専門局から一般局の免許に移行。1977年にテレビ朝日という略称に変わってもしばらく続いたが、79年をもって終了した。

そして、超実験的な試みとして、中高生たちがニュースを伝え、解説も行う「ニュースキッド715」(1979年・東京12チャンネル)の存在を最後に加えておきたい。

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