産業リサーチ(陸運) 日通・ヤマトが2強、追う佐川と日立

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日本の物流市場規模は2000年度でざっと21兆円といわれる。このうち狭義の陸運-トラック運送業は11.3兆円で56%を占める。
 ほかに内航・外航海運が4.9兆円弱(22%)、倉庫業が1.7兆円(8%)、港湾運送業が1.1兆円(6%)、利用運送業が1.1兆円(5%)、国際航空貨物が2700億円(1%)、鉄道貨物運送が1400億円(1%)等と続く。この市場規模は鉄鋼(13兆円)を上回り、電子工業(26兆円)に近い。
 物流の大手企業では日本通運が連結売り上げで1.7兆円をあげトップ、世界では4位にランクされる。同社は通運(鉄道利用)、一般貨物トラック、引越、港湾運送、航空フォワダーの各分野でもトップであり、総合物流分野で第一人者といえる。
 これに続くのが宅配便でトップに立つヤマト運輸で9700億円の連結売り上げをあげており、日通に続く1兆円企業誕生が間近である。
 同社の場合、特筆されるのが世界最大の米国ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)と90年に国際宅配便事業で合弁会社を設立し、関係を強化したことだ。2002年にはその合弁事業を再構築(UPSがフリッツ社を買収したことが契機)したものの、ユーピーエス・ヤマト・エクスプレス(UPS51%、ヤマト49%出資)の枠組みは変更ない。
 この日本2強に対抗し、特に宅配便分野でヤマトに肉薄しているのが非上場の佐川急便(年商7000億円台)である。2002年度で宅配便の取扱個数は8.8億個弱とヤマトの9.4億個強との差を詰め、3位の日通(4億個弱)の倍以上の実績をあげた。
 同社はまた、1994年にDHLジャパン、2001年に航空貨物大手の近鉄エクスプレスと業務提携、2002年3月には全国34社の地方法人を吸収合併し、2強追撃体制を固めた。
 一方、日本4位の西濃運輸(年商4100億円弱)は1999年ドイツ・シェンカー社(世界5位)と業務提携を開始したのを発展させ、昨年4月に合弁会社を設立した。また、同社は新日鐵系の山九とも提携している。
 この中で5位の日立物流と6位の福山通運(ともに2400億~2500億円台)は1999年に戦略提携した。その翌年には相互に100万株づつ株式を持ち合った。両者は昨年末記者会見し、3年間の提携効果として累計85億円の成果があったと報告した。拠点の相互利用、小口貨物・幹線輸送の受委託、共同営業等が内容だ。両社は現在、イオングループの物流再構築にも参画、福山が関東、日立物流は関西の拠点を最近相次いで立ち上げた。
 日立物流ではまた2002年末、郵船航空サービスとの戦略提携を発表、その国際拠点(海外120)の活用を図る考えだ。
 なお、今年4月発足した日本郵政公社は、ゆうパック(小包)のシェアを3年後の2005年度に10%(2001年度5.8%)に拡大する中期計画に基づき、5月に日立物流と業務提携した。同公社は既に西濃運輸など運送16社、山九、三井倉庫の倉庫2社とも提携済みで、日立物流は19番目の提携となる。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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