買ってはいけない!「戸建て」見分けるプロの視点 コロナのいま「狭小戸建て」は買うべきか

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注意点を記しておきます。

郊外戸建て住宅といえばその代表格が戦後全国で開発されたニュータウンです。都市圏に地方から人々が集積する受け皿の役割を果たしたのが、ニュータウンでした。代表的なものに東京の多摩ニュータウン、名古屋の高蔵寺ニュータウン、そして大阪の千里ニュータウンがあります。

ニュータウンには実は定義があります。国土交通省のホームページによれば、ニュータウンとは①1955年以降に開発された宅地、②計画戸数1000戸以上または計画人口3000人以上、③開発面積が16ha以上、の事業をいいます。

この定義によるニュータウンは全国で2022カ所、総開発面積で18.9万haにおよびます。この面積はほぼ大阪府の面積に匹敵します。現在でもまだ約40カ所で開発中とされます。

今生じているのがこのニュータウンでの大量の売却案件です。では、これらの家は郊外生活をおくるうえで「買い」でしょうか。答えは「否」です。

多くのニュータウンで住民が高齢化

理由は簡単です。この街で育った子ども世代が戻ってくるなら街に新陳代謝が発生して、街はふたたび活気づきますが、彼らの多くはすでに家を持ち、わざわざ坂が多くて生活利便施設も整わなくなってしまったニュータウンには戻ってきません。

また、彼らの多くはニュータウンに郷愁を感じたりしません。彼らが過ごしたニュータウンは、父親がローンを背負いながら必死に働き、家では専業主婦だった母親が塾の送り迎えをし、中学校からは私立中学に通い、そのまま大学、会社に就職。地域での住民同士の交流なども少なく、近所の人の顔が思い浮かばない人も少なくないのです。

街は3代暮らさないとコミュニティーが形成されない、と言われます。3代住んだら江戸っ子と呼ばれるのも、同じ地域で世代が代替わりしていくことで、互いの絆が生まれてくるからです。

これからの時代は、家が足りなかった時代の産物であるともいえるニュータウンにあえて住む理由が見当たりません。もちろんニュータウンの中には、地域の人たちが努力してコミュニティーをつくり、生活をエンジョイしているところもありますが、山や大地を切り崩して人工的につくり上げた街で新しい文化や芸術が育っていくためには、まだ相当の時間が必要です。そしてそのためには多くのニュータウンであまりに住民が高齢化して、街の新陳代謝が促進できない状態にまで追い込まれています。

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