それでもマツダが「自動運転レベル0」と表する訳 2022年発売「異常時対応システム」の超技術

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約60秒間の速度維持は、事故のリスクが高い交差点内を抜けることを想定したもの。最も大きな交差点が約150mあるとして試算した結果、設定されたのが60秒という時間なのだ。

また、同乗者がドライバーの体調急変に気づいた場合、天井の緊急作動スイッチを押して車両を完全停止状態とするシーンも体験した。

緊急停車したときの表示イメージ(写真:マツダ)

こうしたシステムは、バスなどでは採用されているが、乗用車ではまだ量産化されていない。

以上のような、高速道路および一般道路でのクルマの動きは、国土交通省がまとめた「第6期先進安全自動車(ASV)推進計画」(2016~2020年度)のガイドラインに沿った内容だ。正式名称は「路肩退避型等発展型ドライバー異常時対応システム」と呼ばれ、技術要件と課題要件が示されている。

その中では、ドライバーの体調急変時など、緊急時におけるシステムの稼働(クルマの動作)を道路交通法や道路運送車両法の中でどう捉えるかも議論されている。

「自動運転レベルには未相当」というマツダの理念

今度は、「クルマのふるまいを見ていただきたい」と言われ、ワインディングコースで両手をハンドルから、両足をアクセルとブレーキから完全に離した、いわゆる自動運転状態で走行した。これは、完全停止後に病院へ向かう緊急移動など、将来的な導入を視野に入れた開発要件である。

このシチュエーションでは、両手両足を離した状態でもドライバーは「すぐに運転の復帰をする準備ができている」と言えるから、一般的な解釈でいえば自動運転のレベルは「レベル3」に相当する。

CO-PILOT CONCEPTは、この状態で道路標識を認識しながら直線では時速60kmまで一気に加速し、またコーナーでは適宜、減速していた。クルマの動きは極めてスムーズで、過度に周囲に注意を払ったようなまったりとした退屈感はなく、クルマとしての「ふるまい」から「走る歓び」が感じ取れた。

カーブや車線変更時の動作もスムーズだった(写真:マツダ)

こうした状態に対して、後席に同乗した開発担当者は「あくまでも将来を見越した技術を体感していただくもの」という前置きをしたうえで、ドライバー異常時対応システムという観点では「CO-PILOT CONCEPTの自動運転レベルはゼロだ」と説明した。

この「自動運転レベルゼロ」という表現は、技術的な解釈としてではなく、どんなに高度な運転支援システムを搭載しても、「運転の主役は人である」というマツダの開発理念を強調するため用いた言葉であると、筆者は理解している。

次ページ技術スペックは「レベル3以上」だが……
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