"12.9インチiPad"が注目されるワケ 「単にサイズが大きくなるだけ」のはずはない

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左端が12.9インチiPad(Macrumorsより) 

と、本体製品の予想をするにはあまりに情報が少なすぎる。そもそも12インチ程度の大画面iPadが登場するとの噂は、2014年に入ってから何度から浮かび上がってきてきた。それがここまで注目を浴びている理由は、ブルームバーグというブランドが報じたことに加え、先日発表されたアップルの決算で、iPadが注目を集めたからだろう。

アップルの第3四半期(4~6月)では事前のiPad売り上げ事前予測1330万台を9.2%下回った。iPadの限界説に対してアップルのティム・クックCEOは「これは一時的なものだ」と決算時に強調していたが、それを額面通りに受け取る人はいない。

なぜIBMと提携したのか

アップル自身、”より良いiPad”を作りさえすれば成長が期待できた時期は過ぎ去り、適応領域を積極的に開拓していく必要があると考えているはずだ。そうでなければ、IBMとの提携もなかっただろう。IBMとは「IBM MobileFirst for iOS」と呼ばれる一連の企業向けソリューションを開発していく。今年後半には100以上の業務用に特化したアプリケーションが利用可能になる。

”企業向け端末としてのiPad”は、これまでも一部で使われてきたが、プラットフォームの成長があまりにも早すぎて、後回しにされてきた部分でもある。そこに力を入れ始めたのは、アップル自身が成長軸をひとつ増やしたいと考えたからに他ならない。クックCEOが”一時的な停滞”と主張するのも、成長軸を増やすことでまだまだiPadの市場を伸ばせるとの自信を持っているからだ。

ここではもう少し本質的な部分に立ち返って、”iPadの潜在力”について考えてみたい。これまで企業向けにiPadの機能や管理性を上げることに、あまり興味を持っていなかったように見えたアップルが本気で取り組むのであれば、それは新たな収益機会を得る場にはなるが、ちょっとシックリとこない。

なぜなら、すでに業務用途としてもiPadは浸透しているからだ。確かに業務用端末然とはしていないが、今だって多くの人が仕事のためにiPadを使っている。日本では欧米ほど、ビジネスミーティングでiPadに出会う機会は多くないが、北米でミーティングをしていると、かなり多くの人(多くは閲覧と承認、指示などのコミュニケーション重視の使い方をするエグゼクティブ)がiPadを会議室に持ち込んで使いこなしている。

「iPadは、すでに需要が一巡した上、パフォーマンス面でも不満に思うようなことがなく、買い替え需要を喚起できなくなった」との分析もあるようだが、こちらもピンとこない。iPadは欧米で猛烈な速度で普及したがパーソナルツールとして、ノートPCよりも多く使われているわけではない。一時、言われていたような、ノートPC市場をどんどん侵食していくような製品ならば、まだまだ需要一巡などと言えるタイミングではない。

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