約5000万円の豪華絢爛キャンピングカー売れる謎 全長9.9mと規格外のサイズでも購入者は絶えず

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新型車と一緒に展示されていた2017modelの中古車。こちらは約半額になるが、供給が追いついていない状況だ(筆者撮影)

筆者には、なかなか想像すら難しい世界の話だが、コロナ禍の影響などはないのだろうか。前出の村上氏によれば、顧客や受注の数にはあまり変化はないが、「アメリカの生産体制などに影響が出ている」という。コロナ禍により、とくにアメリカでは多くの犠牲者が出たが、その影響で新車の製造がほとんどのメーカーで追いついていない。そのため、現地では中古車の需要が増え、在庫が不足気味だという。2020年にワッツは例年のように新車3台、中古車3台をオーダーしたが、中古車は1台しか入荷しなかったそうだ。

2017modelのインテリア(筆者撮影)

ちなみに今回のショーでワッツは、2021年の新型車に加え、同モデル2017年型の中古車も展示した。価格は新型車の約半額だが、それでも2250万円。東京都内でも場所によっては中古マンションなら買える値段だ。しかも、イベント直前にオーダーが入り、取材当日はすでに「売約済み」。今後、もしティフィン社で生産体制の正常化に遅れが生じれば、新車の供給が滞り、日本でも中古車需要はさらに増えることが予想される。

また、従来、ティフィン社製キャンピングカーは、基本的に現地仕様と同じ左ハンドル車のままで販売していた。だが、日本の顧客には「右ハンドル仕様がほしい」という声も多い。そこで、コロナ前にハンドルを右側にした日本仕様をメーカーに依頼し、了承を得ていた。だが、コロナ禍になり、カスタマイズなどを行う専門工場が閉鎖。「約束は反故になってしまった」という。「右ハンドル仕様が入れば購入する」という見込み客も多かったため、ビジネスチャンスを損失してしまったことになる。

巨大キャンピングカーは富の象徴、購入者は絶えず

余談だが、ホンダが2021年8月に世界同時発表した国産スーパーカー「NSXタイプS」は、価格が2794万円。現行モデルの最終バージョンで、国内では30台の限定販売。その稀少性などが大きな話題を呼び、9月の受注開始から瞬く間に予定台数に達し、受注受け付けはすぐに終了したという。2000万円を超えるスーパーカーや、5000万円のキャンピングカー。高級車や高価な服などが飛ぶように売れたバブル景気の崩壊後、日本人は「消費をあまりせず、貯蓄を好む国民性」だといわれるようになった。また、「世界的にみて富裕層が少ない国」との指摘もある。だが、なかなかどうして、クルマという趣味に大金をかける豪傑が、まだまだ日本にもいるようだ。

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平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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