カゴメ、東南アジアで大人気の理由 「トマトが大嫌いな国」でも、トマトジュースが売れる

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野菜や果物が豊富な東南アジアなのに、現地で売られているトマトの品質は悪く、そのまま食べるイメージがない。強いて言えば、東南アジアの人々にとって、トマトは、日本でいう、ひと昔前の『セロリ』のような、「とっつきにくい野菜」のイメージだったのだ。

トマトジュースをそのまま持って行ってもイメージが悪いので、売れない。日本で安定した人気を誇る「野菜生活」は、「忙しくても美味しく手軽に野菜がとれる」いう「提案」が受け入れられた。

だが、東南アジアでは、屋台に行くと、いくらでも野菜や果物が売っている。そのため誰も買ってくれない。また、「日本品質の野菜・果汁100%」では、価格も高すぎて話にならない。

「トマトそのもの」ではなく、「美容健康」を伝える

では、いったい、どんな切り口で「カゴメの価値」を伝えればよいのだろうか。敬遠されるトマトだからこそ、やれることは何か。試行錯誤の末、カゴメが見つけたものは、実は原点である、「トマト」だった。

机の上では、答えは出ない。山本は、現地の家庭を複数の人数で一軒一軒まわり、現地の生活を日々記録してもらい、切り口を考えた。すると、意外や意外、暮らしの中で、「肌の白さ」「美しさ」、さらには健康全般を気にしている層が、当初の想定よりも非常に多かった。女性はもちろんだが、男性も、だったのだ!

特にタイでは、男性でも「自分が出世しないのは、肌が汚いからだ」と真顔で言う人も少なくなかったという(必ずしもそれだけではないはずだが…)。ニューハーフも多く、美意識も高いお国柄だから、だろうか。

試行錯誤の結果、思い切って注目したのは、トマトそのものではなく、トマトに含まれる美容成分「リコピン」だった。現地ニーズに合わせて、リコピンの健康・美肌効果を打ち出し、「トマトそのもの」ではなく、「トマトの中のリコピン」による、「美容健康市場」を創造し、切り開こうとしたのだ。

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