新生ドコモ、法人事業で「売上高2兆円」への道筋 半年遅れで始動、「再編構想」で狙う軸足転換

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ドコモでは低価格帯の新料金プラン「ahamo(アハモ)」の投入などにより、消費者向け通信事業の利益が圧迫されており、今後も収益拡大は難しいとみられる。一方、法人向け事業は企業のデジタル化需要を取り込んで伸ばせる可能性が高い。これを強化することで、通信事業に代わる新たな収益基盤を育てる狙いがある。

ドコモ、コム、コムウェア3社の法人事業売上高の合計は、2021年3月期時点で約1兆6000億円。新ドコモではこれを2026年3月期に2兆円以上に引き上げる計画だ。一方、スマートライフ事業は2021年3月期(約6000億円)の2倍近くまで拡大させる。

グループ再編に伴う業績押し上げ効果は、営業利益ベースで2024年3月期までに1000億円、2026年3月期までに2000億円と試算した。そのうち、売り上げ拡大が半分、経費削減分が半分を占めるという。

法人事業を強化するために新ドコモでは、法人営業の共通ブランド「ドコモビジネス」を展開するなどの営業施策を打ち出す方針だ。スマートライフ事業でも、電力小売り事業に新規参入したり、映像配信を手掛けるNTTぷららを統合してコンテンツ発信力を強化したりするという。

ライバルも攻勢かける法人事業

そもそも、新ドコモグループへの再編は当初、2021年夏ごろからの実施を想定していた。だが2020年末、KDDIやソフトバンクなど競合他社が総務省に意見を申し立て、公正な競争を確保する観点から問題がないかを検討する有識者会議が開かれていた。

そのさなかの2021年3月、総務省幹部に対するNTTの接待問題が発覚。有識者会議は中断され、結論が先送りになっていた。10月12日には法令上、再編に制約がないとする同会議の報告書が公表され、ようやくグループ再編に向けた動きが加速し始めた格好だ。

なお、NTTの澤田純社長は25日に開いた記者会見で、「(当初計画比で)遅れはあまり大きいものではない」と強調している。

再編についての会見の翌26日、NTTの株価終値は1株あたり3267円と、前日比5%強上昇した。シティグループ証券の鶴尾充伸ディレクターは「グループ再編に伴い、NTTがEPS(1株あたり利益)を引き上げる計画が市場から好感された」と指摘する。NTTは会見で、2024年3月期の目標EPSを370円と、50円引き上げる目標を発表している。

好意的な受け止めが広がる中ではあるが、業界アナリストからは「(統合する3社が)有効に機能統合できるかが課題になる」(SMBC日興証券の菊池悟シニアアナリスト)との指摘もある。

新ドコモが成長事業と見定める法人事業は、いずれもKDDIやソフトバンクなど競合他社が注力する領域でもある。ソフトバンクとKDDIは2022年3月期の法人事業の営業利益を前期比10~19%の増益と見込む。

井伊社長は「他社に勝てるような競争力のあるサービスを出せるか、あるいはコストを下げていけるか。これからの取り組みでいちばん大事な点だ」と語る。

高野 馨太 東洋経済 記者

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たかの けいた / Keita Takano

東京都羽村市生まれ。早稲田大学法学部卒。在学中に中国・上海の復旦大学に留学。日本経済新聞社を経て2021年に東洋経済新報社入社。担当業界は通信、ITなど。中国、農業、食品分野に関心。趣味は魚釣りと飲み歩き。

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