「日本株はどうせダメ病」に陥る人が見逃す真実 アメリカは好調だが日本株も過度な悲観は不要

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こうした「日本株はどうせだめだめ病」が蔓延するのは、別に足元に限ったことではなく、過去から頻繁に流行してきた感が強い。とくに国内機関投資家の間では、どうせだめだから買いもしないが売りもしないという不活発な状態になっており、このため短期海外筋が買えば上がり、売れば下がるという体たらくに陥っている。

9月半ばにかけて日経平均が上振れし、その後は下振れするといった、大幅な「行って来い」相場になったが、こうした値動きにいちばん驚いているのは売り買いした短期筋自身ではないか、という識者の指摘があった。

大いに同意する。つまり「ちょっと買い上げたら、日経平均がこんなに上昇して、驚いた」というわけで、海外短期筋は「やはり日本株市場は海外勢に振り回されるという点では新興国並みだ」との事実を、あらためて認識したのではないだろうか。

目先の日米株価の乖離は「時差」によるもの

そうした日本市場の体たらくは、今後もずっと続くだろうし、それをあれこれ言っても変わらないだろうから、なげいても仕方がない。ただ、足元の相場つきに限れば、先週アメリカ株が堅調でも日本株が軟調だったのは、そうした構造要因だけではないだろう。

これは、日米企業の収益発表の「時差」によるところが大きいと解釈している。アメリカではすでに7~9月の決算発表社数が増加し、前述のように市場がそれを好感する動きが優勢となっている。一方、日本では、3月本決算企業の上期決算発表は今週以降が佳境となる。

日本ではひと足早く2月本決算企業の上期業績が公開されたが、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、9月まで緊急事態宣言などが発令されていたため、2月本決算企業で多数を占める小売り・外食などの内需系企業の上期実績は当然冴えないものとなった。「今後に期待」というところだが、2月本決算企業でも輸出製造業の竹内製作所や安川電機などは、株価の反応はともかく、決算内容は良好だった。

3月本決算企業では、輸出製造業企業が多くなる。自動車の減産が完成車メーカーや自動車部品メーカーの収益の重しとなっていると推察されるものの、設備機械などの輸出は好調に推移している。このため、アメリカに遅れる形で、日本も企業収益の堅調さを好感し、株価が再度上値を探る展開に入ると見込まれるのではないだろうか。

日経平均も、年末前後に向けて3万円を超え、2月と9月の高値にほぼ並ぶという「当面最後の株価上昇」を遂げるものと、引き続き予想している。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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