伊藤忠商事の中国食料戦略、日本企業を大陸へつなぐ

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頂新にとっても、飲料事業は即席?と並ぶ大きな柱に成長した。こうした実績の積み上げが伊藤忠と頂新の信頼関係を深め、両社は08年11月に資本提携で合意。伊藤忠は翌年5月、食品や外食、小売りなど頂新のグループ企業を束ねる持ち株会社に資本参画した。

リーマンショック直後の金融・経済混乱の真っただ中、伊藤忠が投じた金額は何と700億円(出資比率は20%)。食料分野では98年のファミリーマートへの出資(投資金額1350億円)に次ぐ額で、伊藤忠全体でも過去有数の大型投資である。食料部門の責任者である青木芳久・専務執行役員はこう語る。

「大きな節目には、それを誰もが実感するような大きなイベントが必要だ。今回の頂新への資本参画は、(川下への進出となった)ファミマ出資に続く大きな節目で、当社の食料事業が中国を柱とする海外へと大きく踏み出す第一歩。700億円に上る金額は、決意の大きさと両社の信頼関係を示している」

持ち株会社自体への出資によって、伊藤忠と頂新グループは文字どおりの運命共同体になった。頂新グループ全体の利益が増えれば増えるほど、出資比率に応じた伊藤忠の持ち分利益や配当収入も膨らむ。頂心は即席?、飲料に続く第3、第4の新たな利益柱の育成を目指しており、それをサポートしていくのが伊藤忠の役目である。

頂新の事業意欲は旺盛で、伊藤忠の中国食料事業担当者らは日本企業との仲介役に大忙しだ。今年4月には、国内業務用マヨネーズ2位のケンコーマヨネーズが、頂新傘下の味全食品工業と提携に至った。杭州に新工場も建設し、両社の合弁事業として、中国で業務用マヨネーズ、ドレッシング類を生産・販売する。

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