着たい服がない!太め女性の悩みに応える ビッグデータとアルゴリズムを駆使

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利用者からは喜びの声が上がっている。「サイズが14(日本では17号に相当)以上になるとなかなか気に入る洋服が見つからなかったが、今は大丈夫。アビーポストの洋服は組み合わせ次第で何処にも出掛けられるのが良い」と、看護婦のジェシカは話す。大手IT企業の人事部で働くアリーは「仕事に着ていけるような服が見つからなかったけど、シンプルな服がたくさんところが気に入っている」。また、会計士のミッシェルも「私の住んでいるところは湿気が多くて暑いのに、材質がコットンだと似合わない洋服が多かった。仕方なくポリエステルとかレーヨンの身体の線を隠す洋服を着ていたけど、アビーポストの服は見た目だけでなく着心地が良い」と満足気だ。

こうした女性たちは、積極的にアビーポストをまとった自身の写真をフェイスブックにアップしており、これが同社の宣伝にもつながっている。

どんな体型の人でも満足する服作りたい

「アジア圏へも進出したい」と話すシェイムズCEO(写真左)

顧客からの声に敏感に反応するのも特徴で、「たとえば丈が長いという顧客が数人いれば、その声を拾ってすぐに生産現場に反映する」(シェイムズCEO)。こうした細かな対応が顧客からの信頼感向上につながっており、最初に発注した顧客が1カ月以内に再び注文する率は6割と、多くのリピーターも生み出している。

 同社は現在、米国や英国など4カ国で洋服を販売しており、アジア圏への進出も狙っている。ただ、日本は女性たちの肥満率が3・3%と先進国中でも圧倒的に低い。こうした国での勝算を訪ねると、シェイムズCEOは開口一番「その質問、良く聞いてくれたわ」と嬉しそうに応えた。

現在は大きいサイズの洋服を作っているが、将来的に「小さめのサイズを含めて多様なサイズの女性たちの服作りを考えている」のだという。「私はどんな体型の人でも満足する洋服を作って、女性たちが喜んで働いたり、遊びに行ったりして幸せになるよう、貢献したい」。どうやら、アビーポストの活躍はビッグサイズのマーケットだけではなさそうだ。

Ayako Jacobsson ジャーナリスト

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アヤコ・ジェイコブソン / Ayako Jacobsson

山口県徳山市生まれ、広島市で育つ。東京都立大学(現首都大学東京)法学部卒業、英ケンブリッジ大学、コロラド大学ボルダー校で学ぶ。在学中、AP通信東京支局で編集アシスタント、卒業後はビジネステレビのディレクターとして「ウォール・ストリート・ジャーナルを読む」「製造物責任法」等を担当。その後、読売新聞英字新聞記者として、通信、テレビ、映画、ホテルなどの業界を取材した。ペルーのフジモリ元大統領へのインタビューも行った。1999年頃からシリコンバレーに拠点を置き、取材・執筆活動を行っている。

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