黒田日銀総裁、「賃上げ持続に向け協調必要」

「物価目標が賃金決定の目安になる」

 8月23日、黒田東彦日銀総裁は、米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済シンポジウムで講演し、今後も賃金上昇が継続するには賃上げの「協調メカニズム」を構築することが必要との認識を示した。22日撮影(2014年 ロイター/David Stubbs)

[東京 24日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は23日、米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済シンポジウムで講演し、今後も賃金上昇が継続するには賃上げの「協調メカニズム」を構築することが必要との認識を示した。日銀が掲げる2%の物価安定目標は賃金決定のメルクマール(目安)になり得る、と語った。

日銀が24日、ホームページで内容を公表した。

総裁は日本の労働市場について、足元で完全失業率が3.7%と3%台半ばと推計されている「構造的失業率」とほぼ同じ水準まで低下しているものの、「今なお解決すべき重要な課題が残存している」と語った。

長く続いてきたデフレ経済のもとでは、企業の投資意欲が低下し、「節約のパラドックス」を通じて経済が縮小均衡に陥ったと説明。企業が賃金抑制に伴う利潤を内部資金として蓄積することによって総需要が低迷、再び賃金抑制を迫られるという「典型的な合成の誤謬」による悪循環が長期固定化してしまったと述べた。

こうした状態から抜け出し、賃上げを実現するには「将来に対する明るい展望を経営者と労働者が共有することが必要」と強調。具体的には、日本経済を緩やかなインフレのもとで持続的な成長が実現する経済に変貌させることが重要とし、日銀が昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」(QQE)によって「労働市場にも明るい日が差しつつある」と評価した。

もっとも、現状は「デフレ下で変質した労働市場から、なお脱し切れたとはいえない」とし、例としてパート比率の上昇などをあげた。それでも、「ごく最近の動き」としてフルタイム労働者の増加率が上昇していることを「良い兆候」とし、「企業の成長見通しが改善し始めたことを示唆している」と期待感を表明した。

また、デフレ経済の長期化で、賃上げのフレームワークとしての役割を果たしてきた「春闘」のメカニズムが機能しにくくなったと主張。今年の春闘では、政府からの賃上げ要請もあり、企業が久しぶりのベースアップ(ベア)に踏み切る動きが広がったが、「今後とも賃金が適正なペースで上昇していくためには、賃金を引き上げるための協調メカニズムを構築することが必要」との認識を示した。

そのうえで、日銀が掲げている物価目標は「そうしたメカニズムの中で、企業が賃金を決定する際のメルクマールとなり得る」と指摘。日銀が予想物価上昇率を2%にアンカーすることで、それが労使交渉や企業・家計行動の前提になる可能性を指摘した。

総裁は少子高齢化の進行による労働供給制約の問題にも言及。女性や高齢者の活用のほか、「外国人材の活用についても検討する価値は大きい」と述べるとともに、省労働力的な設備投資や研究開発に力を入れることも、「将来の労働力不足を軽減することにつながる」と語った。

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