周りの雑音に潰れる人と負けない人の決定的な差 成果を出すのに必要なのは「特別な才能」ではない

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つまり結果を出すには、内面の世界に入り、深く集中することが必要なのです。しかし、この集中するということが何より難しいのは、皆さんも容易に想像できるでしょう。なぜなら、スポーツの世界では選手自身の一挙手一投足で年俸や契約の有無が決まり、批評家・記者から事あるごとに評価されます。また、このご時世、少しSNSを見れば、自分への非難などすぐ見つかります。こうした周囲の声が「悪いシグナル=ノイズ」となり、集中を乱してしまうのです。

ところがペドロイアは、そのようなノイズにはいっさい振り回されませんでした。誰の言うことも聞かず、その代わりにひたすら1つのことに取り組み、バットを大きく、力いっぱい振り続けました。それこそが、ペドロイアが大成できた理由なのです。

優先順位がはっきりしていればノイズに惑わされない

その証拠に、ペドロイアは自身の契約金にすら関心を持ちませんでした。MVP受賞直後、提示された4050万ドルの契約書に黙ってサインすると、残りの練習メニューをこなしにさっさとスタジアムに戻ってしまったのです。あまりにも淡々とした様子に、業界の人間は皆面食らいました。一般に年俸交渉は長期にわたり駆け引きを行うものですが、ペドロイアからすれば交渉とは集中をそぐものでしかなかったのです。

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MVPになり、記者から「スーパースター誕生の秘訣は何か」と聞かれたときには、

「あんたに何がわかる? 数字だとか統計だとか、そんなものは気にかけたこともない。おれが気にするのは勝利(Win)の〝W〞と敗北(Lose)の〝L〞だけだ。それ以外はどうでもいいんだ」

と落ち着き払った様子ではっきりと答えました。自分の中の優先順位がはっきりしていれば、ノイズに惑わされることはありません。ペドロイアの目に映っていたのはいつでも野球のボールとバットだけでした。誰もがうらやむような大金を手にした翌日もペドロイアはいつもと同じように、皆が眠りにつく中で1人、朝5時には練習用のバットを振っていたのでした。

チョン・ジュヨン 作家

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Jooyoung Jung

10年以上にわたり苦しみ抜いた難読症を克服し、20万人を超える読者から支持されるに至ったベストセラー作家。韓国第19代大統領選挙で広報・文化発展特別委員会の委員長を務め、ムン・ジェイン大統領候補の組織特別補佐官としても活動し、 民主平和統一諮問委員会において文化担当諮問委員を務めた。 『第20回インディーフォーラム』映画祭に出品した『炎上の心理学』の作品性が認められ、「短編新作選」に選ばれる。文学、心理学、哲学、西洋美術、音楽史、経済、社会などを幅広く研究し、実体験における変化を本にしている。 著書に『3か月で12キロ減らせる黒豆ダイエット』(未邦訳)、『僕はまだ、三十路』(未邦訳)などがある。

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