安倍内閣改造、財政で重要な「3つのポスト」 注目は「女性閣僚」だけではない

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とはいえ、要求したものがすべて来年度予算に盛り込まれるわけではない。厳しい予算査定を受けて、予算の制約の中で(いろいろな意味で)優先度の高いものが採択される。内閣改造で就任する新大臣は、この部分で影響力を行使する余地が残されている。行使できるか否かは、新大臣の手腕にかかっている。

最大の注目ポストは、厚生労働大臣

来年度の予算編成から今回の内閣改造を見ると、最も注目すべきポストは厚生労働大臣である。今や、国の一般会計で政策的経費の中で最大の規模となっている社会保障関係費の大半が、厚生労働大臣が所管する内容となっている。

しかも、消費税率を予定通り10%に上げるか否かによって、盛り込める予算の額が大きく変わってくる。低所得者の社会保険料負担を軽減するための支出や、低所得の年金受給者に対する追加的な給付、介護職員の処遇を改善することも含めた介護保険の給付引き上げなどは、消費税率を予定通り10%に上げないと財源が確保されない。

もし消費税率を予定通り2015年10月に10%に引き上げなければ、厚生労働大臣がやりたくても社会保障給付の充実はご破算になってしまう。そうした大きな政治的決断を背景にしながら、内閣改造後の厚生労働大臣が来年度予算をどう取りまとめて行くか、その手腕が問われる。

一方、集団的自衛権の問題に注目が集まりがちな防衛大臣だが、防衛省の概算要求が過去最大規模になるとの報道が早くも出始めている。離島防衛強化のための新型輸送機オスプレイの購入や、次期戦闘機F35の購入、無人偵察機や新たな早期警戒管制機の購入と、支出増の目白押しである。2012年末に発足した第2次安倍内閣になるまでは、防衛関係費は緩やかに削減されてきて、財政収支の悪化を食い止めるための歳出削減に貢献する対象となっていた。

ところが、安全保障環境の変化もあって、第2次安倍内閣になってからは増加に転じている。もはや防衛関係費総額が「切りしろ」ではなくなっている。とはいえ、財政健全化目標を閣議決定している第2次安倍内閣としても、防衛関係費がどしどし増えるとなると、財政収支の悪化を食い止められなくなってしまう。だから、防衛関係費をどうまとめるかは大事なことである。

概算要求に盛り込まなければ来年度予算には盛り込まれないことから、要求は出すだけ出すという割り切りがあれば、内閣改造後の防衛大臣はそうした要求の中でどれを優先して来年度予算に盛り込むかに手腕を発揮できそうである。ただ、いったん要求したからには要求官庁側にも面子が出てくる。要求が認められないとなると面子をつぶされる、という態度になると、内閣改造後の大臣としても引くに引けなくなる。そうなると、要求したものを少しずつでも認めさせて来年度予算に盛り込むという、優先順位なくメリハリのない予算になってしまう。そうしたことにならないように、取りまとめてもらいたいものである。

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