空港に商業モール?関空・伊丹の未来予想図 運営権売却で関西2空港はどう変わる

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海外の空港において、運営権売却で成功しているのがロンドン郊外のルートン空港である。1998年に民間企業連合が運営権を手にした後、空港誘導路の拡張や鉄道駅・駐車場などの整備を進めたほか、チャーター便中心からLCCやビジネスジェットの誘致に成功したことで、年間利用者が15年間で約3倍に増えた。

伊丹が抱える難題

伊丹空港はリニア中央新幹線との競争が懸念される(撮影:尾形文繁)

今回売却される運営権には伊丹空港も含まれているが、こちらは長期的な課題を抱えている。リニア中央新幹線が2027年に品川─名古屋、2045年に名古屋─大阪の開業を予定しているからだ。

現在、伊丹は国内線のみで運用されており、中でも羽田─伊丹線は同空港にとって最大のドル箱路線。リニアが開通すれば、羽田線の減便は確実で、伊丹の利用者減につながりかねない。

この問題の解決モデルとなりそうなのは、ロンドンシティ空港だろう。ロンドン中心部から約10キロメートルという便利な場所に位置しており、世界中から飛行機が集まるヒースロー空港に比べるとターミナルビルがコンパクトで使いやすい。そのため、ビジネスマンを中心に支持されている。

伊丹も今後を見据えれば、利便性を求める乗客にターゲットをシフトすべきだ。伊丹から梅田までは、タクシーを使えば最短約15分で行くことができる。チャーター便やビジネスジェットなどで、カネより時間を重視する利用者に訴求することが重要だ。

関西では、至近距離の中に伊丹・関空・神戸という3つの空港が造られ、かねてから近すぎるがゆえの採算性の悪さが指摘されてきた。神戸空港については、今後も神戸市を中心とした運営が続くが、3空港の関係が正しい方向へ進むためにも、赤字の許されない民間企業が関空・伊丹の運営に参入する意義は大きいだろう。

「週刊東洋経済」2014年8月23日号<8月18日発売>掲載の「核心リポート05」に加筆)

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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