旭硝子が迷い込んだ、建築用ガラスの袋小路 社内でくすぶる現経営陣への不満

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業務提携会見で握手する石村社長(左)とトステムの潮田洋一郎会長(撮影:梅谷秀司)

石村社長の不手際を象徴するもう1つの決定が、建築用ガラスの主力子会社であるAGCグラスプロダクツを2011年4月に住宅設備の国内最大手・トステム(現LIXIL)との合弁体制に移行したことだ。

体制移行への備えが万全でないまま、事業が開始したため、顧客への不十分な説明など運営面の不手際が相次ぎ、1年間にもわたって現場が混乱。結果として、売れ筋である複層ガラスの価格統制がうまく機能せず、プロパー社員の削減や本社からの出向役員が短期間に入れ替わるといった事態を招いた。

混迷を極める現状を変えるべく、旭硝子は7月23日、突如として6年8カ月ぶりの建築用ガラス値上げを打ち出した。日本板硝子とセントラル硝子もこれに追随している。

「1000円札をガラスに張って売るような出血大サービスはやめたい。遅きに失したが、不退転で交渉に臨む」(セントラル硝子幹部)

ただ、値上げがすんなり受け入れられる可能性は低い。大手ゼネコンの調達責任者は「9月1日納品分から価格を引き上げるだと。ふざけるな」と、一方的な態度表明に怒りをあらわにする。

ゼネコンにしてみれば、ガラス価格の引き上げにより工事現場で設計の見直しを迫られる。計画段階なら、施主に建築費の上乗せを求めることはできるが、施主が簡単に建築費への転嫁を受け入れる保証はない。国内ガラス3社は、物件ごとに値上げの幅や時期を決めるといった、長期戦覚悟の交渉に入っている。

4期連続の減益は必至

抜き差しならない建築用ガラスの苦境もあって、7月31日に発表された旭硝子の2014年1~6月期(第2四半期)の連結純利益(親会社の所有者に帰属)は前年同期比81.3%のマイナスとなった。

通期でも4期連続の減益となることは必至。会社側は150億円の最終黒字(前期比7.1%の減益)を見込んでいるが、夏場以降は欧州事業の採算割れが業績の下振れ要因として浮上。国内でも人手不足の影響から、建築用ガラスの販売数量が落ち込むことが懸念される。そうなれば、この水準の利益で止まらず、減益幅が広がる可能性もある。

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