ガンホー、スーパーセル株速攻売却の思惑 海外で協業のはずが…10カ月で提携解消

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すでにガンホーは、欧米やアジアなど33カ国でパズドラを配信。北米・カナダでは400万ダウンロードを達成したほか、香港・台湾、韓国などでもユーザー数を伸ばしている。しかし森下一喜社長は「北米では急激な右肩上がりにはなっておらず、プロモーションに課題があると思っている」と、7月末の中間決算の説明会で語っている。欧米や日本ではスマホ向けゲームの競争環境が激化しており、日本で成功させたような爆発的ヒットを狙うハードルは上がるばかりだ。

一方、現在は中国での配信に向けて準備を進めており、「パズドラを中国向けにかなりカスタマイズして仕様を大きく変える予定」(森下社長)と期待を寄せる。

 「パズドラ」頼みから脱却できるか

ガンホーが海外展開に力を入れるのは、国内市場が頭打ちを迎えているためにほかならない。8月15日時点でパズドラは累計3000万ダウンロードを突破。国内のスマホ普及台数が6000万台程度とされる中、約半分のシェアを握っていることになる。業績数字にも表れており、2013年の国内スマートフォンゲーム市場は3178億円となったが、ガンホーの13年度売上高は1630億円とその過半を占めるほどになっている。

 配信開始から2年半を迎えたパズドラは、従来のユーザー数をどこまで維持できるかに焦点が移りつつある。すでに1年前から「パズドラブームは終わった」と言われ続けてきたガンホーだが、足元も好調な業績が続く。ガンホーは7月にパズドラのパズルゲームに特化した新ゲーム「パズドラW」の配信を開始したほか、人気アイドルグループの嵐を起用した広告宣伝を大体的に展開中だ。人気アニメの「エヴァンゲリオン」「聖闘士星矢」などとのコラボも実施するなど、マンネリ回避に余念がない。

 手元資金に余裕があるといっても、動きの早いスマホゲーム市場では栄枯盛衰が激しいだけに安心はしていられない。今回の株売却の背景には、国内事業の大きな成長が見込めない中で、海外事業開拓を急ぐガンホーの焦りが見え隠れする。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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