企業を成長させる秘策は「高校新卒人材の採用」だ 大卒と高卒の「仕事のできるできない」の差はない

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しかし民間の高卒採用サービスが世に広がり、高校生自身が情報収集できる環境が生まれてきました。主体的に企業選びをする生徒が増え、学校の先生に頼らない就職活動も広まるでしょう。企業が高校生に直接アプローチができる機会もうまれています。それはつまり、企業にとって採用のチャンスが広がるということになります。

採用は需給バランスなので、大企業など大学生からのニーズが高い企業にとっては、大学生だけで充足してしまうかもしれませんが、企業知名度がない、採用が難しい業界、業種には、高卒採用が狙い目と言えます。

世間では、生産工程者などのブルーカラー職やガテン系など、現場で体を使う仕事は高卒採用、頭を使った仕事は大卒採用、という固定観念がまだまだあります。

しかし学歴による情報や知識の差が埋まりつつある中、高卒だからブルーカラー、大卒だからホワイトカラーというのはあてはまらない時代になっています。仕事のできる・できないの差は、学歴にはあまり関係のないことにも、おそらく多くの方が気付き始めていることでしょう。

特に高卒採用を始めるのに追い風な業界はIT業界です。

IT業界は人材不足が鮮明です。高卒者はデジタルネイティブ世代であり、若ければ若いほど柔軟で成長も早いです。IT業界以外でも、例えば人材業界、広告業界、自社で育成支援ができる資格が必要な業界など、頭を使って仕事をする職種でも高卒者が活躍できる素地ができています。

今までの固定概念を外し、あらゆる業種・職種で、高卒者が活き活きと働く、そんな世の中が、すぐそこまで来ています。

大卒と高卒での賃金水準はどうあるべきか

社会的な流れは、学歴や職歴での賃金水準ではなく、成果に対しての賃金体系にシフトしています。職業や能力によっても賃金にバラつきができています。

過去データでは学歴や社歴がベースとなって賃金水準が決まっていますが、現代は過去のデータが当てはまらないVUCA(Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性)と言われる時代に突入しています。これまでの賃金体型は今後大きく崩れていくでしょうし、崩していくべきだと考えます。

高卒社員の入社1~2年間は、大卒社員に比して社会経験も技術も社会人マナーもまだ身についておらず、教育にコストと時間がかかります。そのため、高卒と大卒の賃金ベースについては、教育期間である最初の数年間は賃金の差を設けながらも、教育が一段落つき、本当の意味での社会人スタートが切れる入社3年目以降は、学歴で賃金の差をつけるべきではないと考えています。

企業にとって採用そのものが非常に厳しい時代で、多くの企業は採用の仕方、採用基準、教育、評価体系などを見直しています。学歴で採用基準を設けている企業もあるでしょうが、それも見直す必要があります。それに伴って評価や待遇も見直す必要があります。過去の延長線上では、周りの企業に遅れていき、よい人材の採用ができなくなり、優秀な人材の離職につながります。これまでの固定観念を外し、広い視点で採用戦略を考えていただきたいと思っています。

佐々木 満秀 ジンジブ代表取締役

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ささき みつひで / Mitsuhide Sasaki

大阪府出身。高校卒業後、運送会社に就職。21歳でトラックを購入し、個人事業での運送業を始める。23歳で求人広告会社に就職、営業部長を経て常務取締役に。1998年、同社の倒産をきっかけに起業し、株式会社ピーアンドエフを創業。株式会社ジンジブを設立後、高卒就職を支援するサイト『ジョブドラフト』を開始。自身の就職活動の原体験をきっかけに、高校生の将来の選択肢を拡げるため全国へ就職、採用、教育支援サービスを広げている。

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