現役東大生が作った"超速”サービスの中身 混めばこむほどドンドン速くなる?

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(撮影:田所美千代)

田中CEOが共同創設者の井上碩(せき)氏(23)と出会ったのは、学部生時代にアプリ開発会社で開発作業のアルバイトをしていたころ。日頃から「世界を変えるような技術を駆使して開発をやってみたい」との思いを秘めていた田中CEOは、井上氏が立ち上げた前述のIntellectual Backyardに参加。メンバーと議論を重ねる中で、ミストの具体的なサービス構想が持ち上がっていった。井上氏は以前、この私設ラボから発足した会社のCEOとして、ドコモのスタートアップ育成プログラムに参加していたことがある。

Winny事件でとん挫した技術だったが・・・

端末同士がやり取りするP2Pは以前から研究が進められていたが、同技術を用いたファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」の開発者が逮捕されるなど、事件化したことで研究は下火になっていた。しかし、「技術自体は優れたもの、というのがエンジニアの共通認識。マネタイズ(収益化)できている会社も多くないし、有効な使い方でメリットを示すことができないだろうか」(田中CEO)と開発に乗り出したという。

KDDIの支援プログラムに応募したのは、多くのチームを輩出した経験と、グローバル展開をする上で支援が得られると考えたからだ。開発にあたっては、無限ラボを通じてKDDI研究所や実際の配信事業者とコンタクトし、アドバイスを参考にしつつ作業を進めてきた。

会社としての最終的な目標は、配信業者などへのバイアウト(会社売却)を考えているようだ。「単独で営業などの業務を担当するより、買収してもらって代理店などを利用したほうが効率的」と井上氏。実際、海外では、同業の会社でスタンフォード大学の学生が作った「Peer CDN」が13年12月に米国ヤフーに買収された例もある。

BtoBモデルのMistCDNがヒットするためには、前述の実績作りに加え、KDDIやムゲンラボがどこまで継続的な支援ができるのかといった点も重要な要素になりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光、食品業界の担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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