「妖怪ウォッチ」、爆発的ヒットの極意(中) 仕掛け人が語る「子供向け企画」の正しい作り方

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「アニメ側」から相当嫌われた

ひの・あきひろ●1968年生まれ。福岡の開発会社でメインプログラマー、ディレクターを経て、「子供たちにワクワクしてもらえるゲームを作りたい」という思いから1998年にレベルファイブを設立した。

――最初の段階から全部をお膳立てすることで、従来のゲーム作りの考え方を変えたりもしたのですか?

相当いろいろありました。例えば、アニメを重視した展開をしようとすると、ゲーム側のスタッフは「アニメのためにやってるんじゃない!」と、何だかそういった感じで。アニメ側も同じで、「ゲームをやるためにこのシチュエーションを入れてほしい」と言うと、「いやいやいや、そこはもうアニメとゲームは別でやるものなんですよ」と。こっちは「いやいや、それは過去のやり方でしょ」みたいな。

テレビアニメも今でこそ僕が言ったコンセプトを快く実行してくれますけど、やっぱり当初は「ゲーム屋がなんぼのもんじゃ」的な視線も浴びる。そういった状況の中で、少しずつ築き上げていく感じでした。

――風土改革にも力を入れたわけですね。

僕は一時、アニメ側のスタッフから相当嫌われたと思います。どこか違う世界から来て、のさばっているようなイメージだったでしょうから。当時、ゲーム側のものをアニメのスタッフがいいようにアレンジして、それなりの魅力を出して成功しているパターンが多かった。「アニメは勝手にやらしてもらうんですよ」というような考え方。僕はそれを絶対許さなかった。1つたりとも勝手なキャラクターを生み出すことを許さないという感じだったので。

”わがまま”を貫いた

――でも、そうしないと最初の世界観が崩れてしまうと。

こちらとしても完全に100%の企画が最初からできるわけじゃなくて、初めは20%しか作ってなくて、作りながら少しずつ30%になり、40%になり、世界観が構築されていくものなんで。でも、20%の段階でアニメもゲームも作り始めなきゃいけないんです。世界観の構築度が20%のところでみんなが好き勝手なことをやったら、もう筋なんて通っていない。通っていくはずがないですね。

例えば、「ドラゴンボール」みたいに漫画が完成度の高い状態でガーンとあって、キャラクターが全部確立している中でアニメを放送したり、グッズを展開するんだったらいいと思うんですけど。(ゲームやアニメ、マンガなどを)同時進行するという中では、誰かがその、何ていうんですかね。。。

――総監督として。

そう。わがまま放題しないと、僕のわがままで作るんだと駄々をこねないと、うまく筋が通らないんです。いろいろ恨まれつつも、最初の段階でそれを何とかやってしまおうと思って、やりました。

――妖怪ウォッチはそれがずいぶん活かされて、スムーズに進んだのでしょうか?

相当活かされてるというか、もう揉めごととかないぐらい本当に楽しくやっています。周りの方に信頼をしてもらったり、そうした人間関係があってこそ、妖怪ウォッチで気持ちのいいプロジェクト作りができたのかなと思います。

(撮影:尾形文繁)

「妖怪ウォッチ」、爆発的ヒットの極意(下)では、妖怪ウォッチの今後に迫ります。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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