勝ち組は次々にマンションを購入 中国不動産バブルの勝ち組、負け組(後編)

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株と同じ、チャンスを見極めること

――特にこの5年ほどは不動産の高騰が激しく、そのために家を買いそびれたという人も少なくありません。私の友人夫婦は、貯金が40万元あるときに、買おうと思った家が53万元だったので、翌年もう少し貯金がたまってから現金一括で買おうと思っていたら、100万元に跳ね上がってしまったという話でした。2008年から2009年のことです。

確かに2008年には変動があった。私もその頃に家を買ったから覚えている。2008年の年末ぐらいに価格が下がり始め2009年の年初は最低価格だった。私はちょうど2009年2月ごろに57平方メートルの部屋を40万元で買った。その後、6月くらいにはまたすぐ上がり始め、私が買った部屋も今は160万元になっている。

これは株と一緒だと思う。株はつねにもっと高くなってから売ろうと思っていると、結局、チャンスを逃すことになる。不動産はおよそ5年周期で好調と停滞があるのでそれを見極めることは大切だし、何より周りに踊らされてはいけない。どんなときでも自分を保って実用第一でいかないと。

――このところまた不動産価格が下がっています。それにバブルがはじけるのではないかとずっと言われています。心配ではないですか?

まったく心配はしていない。なぜなら、私が買った物件はどれも交通の便のいいところで、必ず底値で購入しているから。最初の37万元の物件は一時250万元にまであがって、今は200万元くらいまで下がっている。でもたとえ150万元に下がったとしても、損はない。

影響を受けるのは、購入してすぐに転売するような人たちで、私のように長期でやっている者は、売れないときは売らなければいいし、そもそも売るつもりもない。

今、月給は手取りで1万2000元、これに対し賃貸収入は毎月4万元くらいあって安定している。仕事は好きなのでやめるつもりはないけれど、不動産収入があることは将来的に大きな安心になる。

中国の経済は改革開放以降、10倍に発展した。だから個人の収入も10倍にならなければ、負け組だと思うわ。

田中 奈美 ルポライター

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たなか なみ

東京都生まれ。2003年より北京に留学。中国の社会生活やビジネスに関するルポを各紙誌に発表。著書に『北京陳情村』(第15回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作)『中国で儲ける―大陸で稼ぐ日本人起業家たちに学べ』(新潮社)がある

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