マイホームを持たない中国人は敗北者 中国不動産バブルの勝ち組、負け組(前編)

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不動産がまだ今ほど高くないときに買った人たちは、投資の目があったと言われる。でも私はそうともかぎらないと思う。90年代に家を買った同級生は単に虚栄心から、もっとよい家に住みたいと思ったにすぎない。でも結局、それによって時代の波に乗り、発展して、今では成功者みたいな顔をしている。

――そうはいっても、家庭年収にそれほど差があるわけではない?

そう。家のことだけ。仕事も年収も大した違いはいないのに、家を買ったか買わなかったかで、2つの階層に分かれてしまった。それでも以前は家を買った人のほうが少なかったからあまり気にならなかったけど、結婚してある程度の年になると、家を持ってない人のほうが少なくなる。そして周囲から家のあるなしで見られることがストレスになる。

マイホームがないことは、夫婦間のすれ違いのもとにもなっている。時々、家の話になると、つい、誰それさんは家を持っているなんて、夫に嫌みを言ってしまう。そう言うことが間違っていることは知っている。でも気持ちが収まらないと、彼に愚痴るしかない。

だって、中国では家は男が買うものだし、彼の判断が賢くなかったせいで買いそこなったという気持ちがどこかにあるから。夫もそう言われると、何も言えなくなって黙っている。

彼はずっと強いプレッシャーを感じていると思う。それは心理的なものだけでなく、経済的にもそう。いつか家を買うために貯金しておかないといけないと考えると、おカネを使うたびにプレッシャーを感じることになる。それで最近は、私も働き始めた。少しは彼を手伝わないと、と思う。最終的には家を買うという夢は捨てきれない。でもこれだけ価格が上がってしまったら、永遠にかなわないような気もしている。

マイホームがないと、敗北者

――いくらまで下がったら買えると思う?

今、私が住んでいるところは、市中心部近くなので、1平方メートル4万~5万元くらいする。郊外でも1平方メートル2万元。もし4万のところが2万に下がったら、すごく「買い」だとは思うけれど、1平方メートル2万元という金額は、一般庶民にとって、やはりとても高い。多額の借金をして、歯を食いしばってようやく買えるという状況。長年の努力が実を結んで買えるという感じではない。しかもこれは仮定の話で、現実的には市内の不動産価格がそこまで下がることはないでしょう。

――借家に住んだほうが安くつくということは?

私も前はそう思っていたけれど、最近は家賃も高騰しているから、必ずしもそうではないと思う。たとえば妹夫婦が2009年に、北京東部のベッドタウンに家を買ったときは、すでに価格の高騰が始まっていて、1平方メートル1万4000元だった。彼女たちは20年ローンを組んで、月4000元返している。同じ場所で同じくらいの家を借りたら3000元くらいになる。

月に払う金額は、借家のほうが若干は安いかもしれないけれど、大きな違いは4000元払っている家は彼女たち自身のものだということ。

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