日本外交官が苦言「日本が韓国に失望した」理由 「親韓派ほど韓国から離れてしまった」日韓関係

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「一般論として申し上げる」として語っているのだが、実質的には近年の文在寅政権の対日外交を念頭においた注文といっていい。現役外交官としてはそれなりに思い切った発言だが、この内容は同時に日本の対韓外交にもあてはまるものであり、そのあたりの計算があっての発言と思われる。

さらに道上氏は「韓国の日本に対する理解不足」に触れ、韓国人における寿司や居酒屋、日本観光をはじめとする日本好みは「日本文化の消費」にすぎず対日外交とは別の問題だと断言。むしろ「国家次元では、日本を緻密に研究し、対日関係をうまく構築し、しっかり管理、改善しようという作業は見えない。(逆に)即興的な反応や反発がよく目につく」と批判している。

嫌韓は日本の偏見や優越感でなったのではない

そのうえでこう語る。

「韓国は経済発展でその存在感は昔に比べ大きくなり、韓国の国内ニュースはすぐ日本に伝わる。日本との歴史問題を内包するところとして中国、韓国、東南アジアなどがあり、日本からはその比較がよく見えるが、その中で韓国は日本に対する真摯で客観的な姿勢が最も必要な国に見える」

韓国の総合月刊誌『月刊中央』に掲載された外交官の道上尚史氏のインタビュー(写真・黒田勝弘)

道上氏は今回のインタビューで、最近の日本における反韓・嫌韓的な世論の雰囲気を伝え、韓国に一考を促している。その際、道上氏の父親は息子の仕事柄、韓国に親近感を抱いていたが「もうあの国はいい、友達になれない国だとわかった」と言い出していることを紹介しながらこう指摘している。

「平均的な日本人の心が韓国から離れてしまった。現在は韓国への失望と“距離置き”の状況だ。これは一時的な現象ではなく、構造的変化と見なければいけない。韓国に対する偏見や優越感でそうなったのではない。昔に比べ、日本人の韓国への知識は大幅に増えている。韓国をリスペクトしていた人ほど失望が深いともいえる」

最後に、日韓関係回復に向けて助言を求められた道上氏は、まず最も関係が順調だったといわれる金大中政権(1998~2003年)の時を振り返り「日本を理性的、建設的に見て感謝すべきは感謝し、韓国の国益における日本の重要性を深く理解する指導者が登場した、今後の日韓は信頼と協力の関係になるだろうと期待したけれども、最近の韓国はそこから大きく後退したように見える」と述べたうえで次のように語った。

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