「守ろうとしていた人々に守られたことで涙が出た」トヨタの豊田章男社長が株主総会でリコール問題を陳謝

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「公聴会では、数百台のカメラが私に向けられ、瞬いたり、うつむいたりする度に猛烈なフラッシュがたかれた。質疑には、議員に答えるよりも販売店、顧客、従業員や、その家族に話しかけるつもりで応じた。政治でも、お客でも、仕入先のせいでもない、人のせいにはしないと、自分の言葉で語るつもりだった。負け戦のしんがりを務める格好だが、光栄なことだ」

「公聴会を終えて、従業員との会合に臨んだときには、自分が守ろうとしていた人々に守られたことが分かり、恥ずかしながら涙が出た」

「潮目が変わったと思ったのは、ラリー・キング・ライブ(CNNのトーク番組)に出てから。リスクもあるが、編集されずにメッセージを送れる生放送に出たかった。商品や従業員が主役という考えから、これまではメディアを敬遠してきた。だが、今後はもっとトヨタの思いを届けるようにしたい、これは私なりのカイゼンだ」

「ラリー・キング氏に『あなたはどんな車に乗っているか』と聞かれ、年200台、いろいろな車に乗っている、と答えた。思えば、あれで「トヨタの社長は車好き」と思ってもらえたのが、潮目が変わったきっかけかもしれない」。
--。

ときどき冗談を交えながら語る豊田社長には「一瞬たりとも気を抜けない1年」を乗り切ったことから来る自信も感じられた。午前10時に始まった総会は12時2分に終了。参加者は3220人で、昨年より144人少なかった。

(※見出し横写真は2月のプリウスリコール記者会見時の豊田社長 撮影:風間仁一郎)

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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