31年ぶりの高値!「今から仕込める上昇株」発見法 「会社四季報」元編集長がポイントを徹底解説

拡大
縮小

上方修正予備軍を探すもう1つの方法が、四季報秋号に掲載されている「進捗率」の活用だ。

四季報秋号の「進捗率」欄は、会社発表の通期営業利益計画に対する、直近四半期(累計)の進捗度合いを記載している。過去3期の平均進捗率も掲載されているので、それと比較するとよい。今期の進捗率が過去の3期平均を5ポイント以上超過していれば、今後、上方修正する可能性が高い。

任天堂は昨年の秋号で今期進捗率が48.2%だった。3期平均が9.7%だったので、4割近い超過だ。実際、その後、大幅に上方修正され、株価が上昇した。

上の表には直近の第1四半期進捗率が高い企業を掲載した。トリドールホールディングスは進捗率が9割超。第1四半期で上方修正し、株価も上昇が続いている。ただし、コロナ禍からの立ち上がりなど特殊な中での進捗率は、内容をよく吟味したほうがよい。

記事見出しが【独自増額】の銘柄を探す

四季報秋号で上方修正予備軍を探す3つ目の方法が、記事見出しへの着目だ。

記事の冒頭にある見出しは、業績の勢いをひと言で凝縮したもの。【絶好調】など強い見出しにひかれがちだが、上方修正予備軍を探すときは【独自増額】を見つけるとよい。会社計画よりかなり強気の四季報予想を出しているときに付く。秋号以外でも、第1四半期発表後に、【独自増額】の見出しが付くことが多い。

例えば上図の不二家。12月決算企業だ。第1四半期発表後の21年3集夏号で、【独自増額】の見出しが付いた。21年12月期営業利益の会社計画は28億円。これに対して四季報は34億円を予想した。その四季報が発売された6月18日、株価は一時急騰したが、その後は低迷。ところが7月29日に会社が上方修正を発表すると、株価は一気に上昇していった。

不二家の四季報予想に確からしさを感じて株を買った投資家は値上がり益を享受できたわけだ。

もちろん四季報予想がすべてぴたり当たるとは限らない。不二家の上方修正後の営業利益は42億円。四季報予想を超えた特大級の上方修正だった。

大事なのは方向性だ。四季報は会社計画と異なる独自予想を数多く載せている。目を凝らせば上方修正予備軍を見つけられる。

山本 隆行 『会社四季報』元編集長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまもと・たかゆき / Takayuki Yamamoto

早稲田大学法学部卒。『週刊東洋経済』編集部に通算10年所属していたこともあるが、記者、編集者としての人生の大半を切った張ったのマーケット中心にささげてきた。『オール投資』『会社四季報』編集長、四季報オンライン編集長を歴任。著書に『伝説の編集長が教える 会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい』。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT