財政危機で足並み乱れる金融規制論議

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 一方、米国内では「大きすぎて潰せない金融機関を作らせない」という観点から、商業銀行からはOTC(店頭)デリバティブ業務を切り離す案が浮上し、議論が紛糾している。国境を越えて活動する金融機関は、ローカルな規制であっても影響を受けるため、注目される。

また、すでに合意されている事項としては、「標準化されたデリバティブ取引の取引所(クリアリングハウス)への一極集中で利ザヤがとりにくくなることや、バーゼル自己資本規制においてトレーディング・ブックに対する資本賦課が強化されることによる取引の減少も想定される。デリバティブ規制が欧米の大手金融機関の収益を低下させる効果は無視できない」(モルガン・スタンレー証券の大橋英敏マネジング・ディレクター)。

「バーゼル新規制」は細部で一部先送りも

邦銀大手に最も影響が大きいのは、自己資本の質や量の強化を求めるバーゼル自己資本規制の見直しだ。

昨年のピッツバーグサミットで方向性が固まり、現在、QIS(実施した場合の影響度調査)中で、今年11月のソウルサミットでルールが策定される。ただ、邦銀のみならず、「資本からの少数株主持ち分やダブルギアリング(銀行と生命保険会社、または銀行間などの資本持ち合い)の控除は、欧州の大手金融機関にとっても影響が大きい」(野村資本市場研究所・井上主任研究員)。拙速な導入で貸し渋りが生じるなど、景気への影響を懸念する声は強まっている。早ければ12年末とされる実施時期は遅れるか、そうとうに時間をかけた段階的な導入となる可能性が高まっている。

(大崎明子 =週刊東洋経済2010年6月26日号)

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