銀行の格付けに差が出る「会社の財務」正しい見方 社長でも知らない人多い数字に基づく経営手法

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私はこれまで、750社以上の経営指導をしてきました。その中で、B/S(貸借対照表)の数字を見たことがある社長は、わずか3%程度。それ以外は経理部に丸投げがほとんどです。

決算時にP/L(損益計算書)の数字だけを見て、「売り上げが出ているから大丈夫」と安心している社長が実に多い。

ですが、売り上げのすべてを前金でいただく会社や粗利益率100%の会社でもないかぎり、売り上げが上がると、資金繰りは悪化する。「支出が先、入金があと」だからです。

売り上げ、仕入れ、給料といったP/Lの数字を見ても、「会社にいくら現金があるか」はわかりません。会社の現実は、すべてB/Sに記されています。経営で最も大事なのは、「現金(現金同等物)」です。P/Lが赤字でも、支払いにあてる現金があれば、会社は存続できます。

B/Sの右側にある「負債および純資産の部」には、支払手形、買掛金、経費未払金など「資金をどこから、いくら調達したか」についての勘定科目が「資金調達が容易で、短期間で返す必要のある順番」に並んでいます。

B/Sの左側の「資産の部」には、現金預金、受取手形、売掛金、棚卸資産など、「集めたお金がどんな資産に変わったか」についての勘定科目が、「短期間で現金化しやすい順番」に並んでいます。

銀行からの財務評価も変わってくる

現金でいくら持つか、預金はいくらにするか、土地を所有するのか借りるのか。資金の調達額や資産の額が同じでも、「勘定科目の取り方」を変えると、銀行からの財務評価(格付け)が変わります。

銀行の格付けを上げるには、「資産の部は、より上位の勘定科目に数字を移す(上位科目を増やす)」「負債の部は、より下位の勘定科目に数字を移す(下位科目を増やす)」。これが基本です。

資産は、固定資産(土地や建物など)よりも流動資産(受取手形、固定預金、現金など)が多いと銀行の格付けは上がります。現金化しやすい科目が多いほど、貸し出したお金を回収しやすいからです。したがって「売掛金よりも現金で回収する」などして、より上位の勘定科目を増やします。

負債は、支払手形や買掛金よりも、資金を調達しにくい長期借入金などの下位科目が多いと格付けは上がります。ですから「支払手形を増やすよりも買掛金を増やす」などして、より下位の勘定科目を増やします。

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