お産と子育てにまつわる選民意識 「自然な〇〇」という脅し

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この先生、産婦人科医としては相当変わっていると思われ、ダウン症児の年齢別発生率の表を見せながらクアトロテストについての詳細な説明をしてくださって、「これを受けるなら、異常があった場合は中絶手術を受ける前提で受けてもらいます」とおっしゃったり。

また羊水検査の事故発生率が1/300程度で、35歳の妊娠のダウン症児発生率である1/297の方が事故発声率を上回るために羊水検査適応になること、ダウン症児が現在日本では受け皿が十分とは言えず、さらに医学の発達により長命になったため、親が亡くなってもひとりで生きていかなければならなくなること、しかしダウン症の子供たちの天真爛漫さのすばらしさ、などなど。あらゆる妊娠についてのリスクを包み隠さずお話くださいました。

あ、そうそう、私はすごく勉強になったけど、普通の妊婦さんだったら涙目になるかもしれない先生ですから、「若林先生がいい先生だっていうから!」って受診する際はお気をつけください(苦笑)。甘いところ一切なしの先生ですから。

人を脅して、何が楽しいの?

この先生を通じて「自然なお産って一体なんなんだ?!」と疑問を感じるようになりました。ずいぶんと違うじゃないか、今まで読んできた「自然なお産」のイメージと、先生が教えてくれるリスクと。

妊娠期間中様々に勉強していくにつれて、一つの答えに行き着きました。自然なお産・子育ては、極端な食養生・健康法と同じ構図を持っている、と。

この方法で産まないと子供に出産時トラウマが残って、一生を左右するとか、母親の母性が損なわれるとか、この方法で育てないと子どもが本来持っている無限の可能性を阻害して成長を妨げるだの、なんだのかんだの。

そこにあるのは、ある種の脅しと狭量さ、それと引き換えの優越感・選民意識です。

自然なお産と子育ての効果が実際どうなのかはさておき。わたしは、そういう脅しと狭量さ、優越感と選民意識が大っキライなのですよ。

発達した現代の医学や科学技術から受けている恩恵を否定して、それらすべてを悪とみなし、それらを使わずに「この方法」を使えば万事OK、「これ」をやらないのは愚かで間違っており取り返しの付かないことが起こる……って。

ホントむかつく。なにそれ。人を脅してなにが楽しいの?

この構図に気づいて以来、「自然な」なんとかが全部不自然にみえてきてしまった上に、妊産婦を取り巻く医療現場の頑張りを目の当たりにした私は、病院でのお産を大プッシュする鍼灸師となりました。

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