上司が「やるやる詐欺」、所属部門もジリ貧に 転職、残る、MBA・・・ベストな選択とは?

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まず、選択肢②の「担当役員が退職するまで、ひたすらスキルを鍛えつつ待つ」作戦は、K.Yさんのケースでは絶対に避けるべきです。

理由は3つあります。K.Yさんは仕事に対して非常にコミットされていると見受けられること。担当役員が上司である間は仕事における成長が制限されうる危険性があること。そして、仕事に真摯に取り組むスタンスにもかかわらず、「仕事というご自身の人生の選択肢と方向性を、他人(上司)が退職するか否かという他人の判断に委ねている状況」になるからです。

K.Yさんが「仕事はそこそこでいい」という考えであれば、台風が過ぎるまで耐え忍ぶのもありでしょうが、仕事にきちんと向き合っている人にとって、成長できない状況が少しでも続くこと、ご自身の今後の仕事における成長や可能性が他人の判断に完全に依拠してしまうという受け身の姿勢は、ありえない判断であり、耐え切れるものではないと推測します。今はいいと思っても、将来、必ず後悔するでしょう。

また、その場合、現在の上司の次に来た上司が同じスタンスで、なおかつ会社のカルチャーが変わらなかった場合に、耐え忍んでいる間に自分の成長が止まるというおそれもあります。となると、「次の打ち手」がかなり制限されますので、やはり合理的な選択肢とは思えません。

それでは選択肢①と③はどうでしょうか。結論から申し上げますと、どっちもアリだと思います。が、一方でそれぞれについて気をつけるべきポイントがあります。

従業員の声に耳を貸す企業はまずない

選択肢①の「従業員の声にもっと耳を貸す企業に転職する」ですが、そんな企業はまずないと考えるべきです。「ご自身が積極的に発信して聞かせる」というスタンスを持って、初めて聞いてもらえるのです。受け身の姿勢でありながら、話を聞いてもらえるような余裕のある企業はありません。どんな企業でも、聞いてもらうためには何かしらのハードルがあるという前提で臨みましょう。

したがって、「聞いてもらえるか否か」という基準ではなく、「(転職先の)企業で何ができるか、どんな成長ができるか」、そしてご自身がその企業へ「どんな付加価値を提供できるか」といった基準で選ぶ。上司のスタンスにもよりますが、結局のところ、聞いてもらえるか否かは、ご自身がしかるべき結果を出すことが出発点になります。

ただし、その際に、正論が必ずしも通るとは限りませんので、ぜひ現在の経験を糧に、ご自身サイドでの反省点の整理に加え、今までとは異なるアプローチなど、複数の手法を用意されることをお勧めします。

選択肢③「MBA、もしくはExecutive MBAにチャレンジする」ですが、もはや日本においてもMBAはデフレ状態で、MBAそのものの価値はまったくありません。ご自身が今までやってきたこととMBAがどう補完関係にあるのかを考え抜いたうえで、時間とおカネを投資するかを検討してみてください。

また、EMBAであれば欧米系スクールでも仕事との掛け持ちが可能なところもあります。大変だとは思いますが、MBA取得に価値を見いだし、なおかつ勤務先をも納得させるだけの、まさに「上を動かすリーダーシップ」を発揮できれば、その選択肢もあるでしょう。

いずれの選択肢を取るにせよ、根本はご自身が成長するためにはどの選択肢がいいかがポイントになると思います。まずはご自身の経験とスキルを棚卸しして、何が強みで何が足りないか、そして今後、勝負していく中でどこに注力するかを自問することから選択肢を検討しましょう。そのうえで、現在の会社にとどまるのか、他社へ行くのか、ビジネススクールへ行くのか、どの道がご自身の成長のカーブをいちばん高める道なのかを考えてみてください。

キャリアにおいては教科書や正解はありません。環境が変わりゆく中で、その都度、自分にとってのベストは何かを考えつつ、試行錯誤しつつ、行動する必要があります。私自身も日々、自分にとってのベストを考えつつ、悩みながら自問自答しております。K.Yさんもぜひ引き続き、試行錯誤を通じて、長期的なキャリア上の成功を収められますことを、心より応援しております。

※安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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