「台湾産ワクチン」接種開始が内外に広げる大波紋 野党は緊急使用許可に疑問投げかけるが…

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しかし裁判所は、郝、楊両氏にとって、ワクチン接種における選択肢が広がっただけで、権利や法律上の利益を損なったとはいえない。また、薬事法の中のEUAに関する規定では、突発的に緊急事態に陥った公共衛生事件が発生した際、特定の医薬品(ワクチンなど)が公共の利益にかなう場合に認められるもので、特定の個人などの権利を保障するためではないとして訴えを退けた。

次に起きたのは2021年8月17日。台湾中北部の苗栗県議会で、国民党議員らが新型コロナワクチンの接種では、国際的に認められたものに限るよう動議したのだ。民主進歩党(民進党)議員も含め異論がなかったため、議案はそのまま通過してしまった。「国際的に認められた」とあるが、先の郝、楊氏の訴えと同じく高端社製を念頭に置いた動きである。

9割の人が台湾産の接種を希望した県も

しかし、どのようなワクチンを選択するかの自由は国民自身にある。その後、8月20日正午現在のまとめで、苗栗県では接種対象者1万800人のうち、9782人が高端社製を予約したことが分かった。実に同県の90.5%の人々が台湾の高端社製を選択したのだった。

反対派の攻勢はさらに続く。8月20日、蘇偉碩医師を中心とする団体が「高端社製ワクチンのEUA撤回を求める住民投票へ向け、10万人の共同提議者募集」の記者会見を開き、賛同を求めたのだ。

彼らの主張は、「あくまでも第3フェーズの治験を終えてから世に出すべきだ」というもの。民進党が与党である以上、反対の声を届けられるのは住民投票だとして、23日の接種開始には間に合わないが住民投票に諮りたいとしている。今後、どのような状況に発展するのか注目していきたい。

反対派の主張のポイントは、第3フェーズの臨床試験を終えておらず変異株への有効性が未知数であるというもの。また、イミュノブリッジング試験(immunobridging、既存のワクチンの効果と比較して有効性を見る方法)や製造コスト、政府調達のプロセスなどが不明瞭、海外旅行ができない可能性などがある。

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