《プロに聞く!人事労務Q&A》退職時の年次有給休暇請求を認めなければなりませんか?

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《プロに聞く!人事労務Q&A》退職時の年次有給休暇請求を認めなければなりませんか?

 

回答者:半沢社会保険労務士事務所 半沢公一

質問

 まもなく育児休業が終了になる従業員(Aさん)から、「休業後に職場に復帰せずに、保持している年次有給休暇をすべて取得してからそのまま退職したい」という申し出がありました。育児休業で長期間休んだ後に年次有給休暇まで取得することに、割り切れなさを感じますし、他の従業員のモチベーションに悪影響を与えないか心配です。この場合、年次有給休暇の取得を認めなくてはなりませんか?(小売業 総務部長)

回答

1.時季指定権と時季変更権

年次有給休暇は、従業員にとっては、好きな日に取得できる権利(時季指定権)があり、これに対して、会社には、その日に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に変更させることができる権利(時季変更権)があります。

しかし、年次有給休暇は、その会社での在職中に取得することを要件としており、退職後にはその権利を行使できないので、職場復帰日から退職日までの間に残っている年次有給休暇について請求された場合には会社としても時季変更権は行使できないことになります。

また、「休暇」の意義は、所定の労働日において労働義務が免除される日ということですから、在職中であっても、今回のように育児休業を取得している期間中は、年次有給休暇を取得することはできません。

よって、Aさんが在職している期間で、休業していない労働日(育児休業終了後に退職を希望する場合には、育児休業終了日と退職希望日までの間の労働日)に、年次有給休暇を取得することになります。

ご質問についての結論は、法定による年次有給休暇であるかぎり、Aさんの請求どおりに有給休暇を与えなければならないということになります。

 

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