「コロナ病床5%」旧国立・社保庁197病院への疑問 法律あっても病床確保は厚労相のお願いベース

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知り合いの厚労省官僚がこんなことを教えてくれた。

地域医療機能推進機構は、厚労省の外局だった旧社会保険庁が国民から保険料を集めてできた病院の寄せ集めだった。前身の「旧社会保険病院」は中小企業などが加入する「旧政府管掌健康保険(現・協会けんぽ)」の積立金から、「旧厚生年金病院」は厚生年金積立金から、「旧船員病院」は、年金部門が厚生年金に統合された「旧船員保険」の積立金でつくられた経緯がある。

こうした公的保険制度は、日本が高齢化する前の戦前から戦中にかけてできたため、多額の積立金を保有していた時期がある。

そのひとつの厚生年金積立金については『厚生年金保険制度回顧録』で、制度ができた当初の旧厚生省年金課長が積立金について次のような証言をしている。

「年金を払うのは先のことだから、今のうち、どんどん使ってしまっても構わない。使ってしまったら先行困るのではないかという声もあったけれども、そんなことは問題ではない。20年先まで大事に持っていても貨幣価値が下がってしまう。だからどんどん運用して活用したほうがいい。せっせと使ってしまえ」

国民の年金積立金を湯水のように垂れ流した

こうしてできた施設のひとつが厚生年金病院だ。ほかにも、「年金福祉事業団」という旧厚生省の天下り先があり、リゾート施設などに採算度外視の投資をして、国民の年金積立金を湯水のように垂れ流した。まさに、元年金課長が予言したとおりのことが起きた。

こうした批判に当時の自公政権は、旧社保庁を解体し、厚生年金病院や社会保険病院などを含めた旧社保庁関連施設の民間売却も決めた。ところが、年金記録問題から社保庁解体のきっかけを作り、2009年8月に政権の座についた民主党は、1カ月もたたないうちに方向転換して、3病院の公営を維持する方針を打ち出す。

当時は、赤字の病院が多いなどの理由で引き受け手がみつかりにくいとして、このままでは地域の中核医療拠点がなくなりかねないとされた。結局、3病院は2014年に統合され、地域医療機能推進機構が生まれた。

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