産業リサーチ【銀行】 大再編実施したが、収益力向上伴わず、貸出集中の弊害も

金融界では1999年以降、大手銀行による再編が一挙に進んだか、不良債権処理で体力が疲弊したため、再編・巨大化により生き残りを目指そうという動きだ。一連の再編は「単に図体が大きくなっただけ」という批判も多い。再編時に掲げた収益力向上については、住友・さくら(三井住友銀行)、三井・中央信託(中央三井信託銀行)の合併を除けばほとんど効果は出ていない。むしろ、再編で特定の経営不振企業への貸出残高が膨れ上がり、巨大リスクとして顕在化する弊害もみられる。
 株価や財務をみると、むしろ再編に距離を置いた三菱東京FGと住友信託が頭一つ抜きん出ている状態だ。両社は顧客基盤の広さという点では他の銀行グループに見劣りするが、他行が不良債権問題に四苦八苦する間に、身軽さを利用して優良資産の積み上げを進めている。
 2002年秋に竹中平蔵金融大臣が誕生、大手行に抜本的な不良債権処理を求めた。これに株価の下落による保有株の含み損拡大も加わり、大手行の面々は目先の危機を乗りきることだけで精一杯の状態だ。みずほが取引先企業に泣きついて1兆円規模の増資に踏み切ったほか、三井住友やUFJは外資証券に出資を仰ぐなど、実質国有化の事態を回避するために苦肉の資本増強策が相次いだ。
 だが、監査法人が銀行・企業の繰延税金資産が適正かどうか審査を厳格化するなかで、取り崩しを余儀なくされる銀行が続出。りそなホールディングスは自己資本比率4%割れとなり、公的資金注入申請に至った。他の大手行もこれから半期決算ごとに将来収益見通しの妥当性を厳しく監査されるようになり、「第二のりそな」が現れる可能性もある。
 収益状況を見ても、デフレ経済の下で融資先企業の財務内容劣化が激しいうえ、株価下落時に多額の損失を被る構造も変わっておらず、明るい展望は全くみえてこない。
 一方、各地の地銀・第二地銀をみると、この2、3年で九州銀・親和、福岡シティ・西日本などの再編が飛び出したが、いずれも過当競争地域の二番手・三番手同士が追い込まれて再編に走るというパターンだ。この5月には北陸・北海道という離れた地域での経営統合も飛び出したが、両行が公的資金注入行であること、北陸銀行は歴史的に道内に店舗が多いこと、などの特殊要因を多く抱えており、同様の再編が続出するかどうかは不透明だ。
また信用金庫業界では、信金中央金庫が黒子となり各地の信金の合併を促進中。信用組合はこの数年で破綻処理が続き、一般的な「地域系信組」は130を切るまでに減った。
 地域銀行や信金・信組も厳しい経営状態に陥っているところは少なくない。金融庁は合併等の再編で破綻を防ぎたい考えで、再編を打ち出した地域金融機関に公的資金注入を可能にした再編促進法を成立させた。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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