「名岐アパレル」で連鎖倒産、産地の厳しい現実 新型コロナが直撃、生き残りへ道はあるのか

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ガゼールはしまむらやライトオン、ジーンズメイトなど低価格カジュアルチェーンが主販路で、量販店向けに広くプライベートブランドも手掛けていた。商品提案力には定評があり、「流行に流されない、存在感のある製品を作るのに長けていた」(業界関係者)。しかし、コロナ禍での衣料離れによる売り上げ減少が直撃、6月29日に民事再生法の適用を申請した。

コイケは、アパレル製品を中心に扱う岐阜県の物流会社がスポンサーに名乗りを上げ、7月に再生計画が裁判所に認可された。他方、ガゼールはいまだスポンサーが決まらないままだ。「2社程度のスポンサー候補がいるが、いずれも異業種と聞いている」(業界関係者)。スポンサーが決まらないまま、破産手続きへの移行を余儀なくされる可能性も少なくない。

栄枯盛衰の「名岐アパレル」

あまりイメージはないかもしれないが、愛知県と岐阜県は歴史的なアパレル関連企業の集積地だ。愛知県は毛織物由来のメーカーのほか、繊維商社も多い。岐阜県には商業の街・岐阜市を中心に戦後アパレル卸が集積、ダイエーやイトーヨーカ堂など総合スーパー(GMS)向けに急成長した。

業界では名古屋と岐阜の頭文字をとって「名岐アパレル」と呼ばれる。かつて展示会が開かれるシーズンには、多数の小売り関係者が泊まり込みで集まり、2~3日かけて「名岐アパレル詣で」が行われたという。

名岐アパレル、特に岐阜のアパレルの特徴は、GMSなど量販店向けに大量の製品を手掛けるものの、自社の名前はほとんど表に出ない「黒子役」だったことだ。多くの消費者は、一度は名岐アパレルの製品を手に取ったことがあるはずだ。だが、その製品を製造した会社の存在は、ほとんど意識されなかったといえるだろう。

そんな名岐アパレルは、かつても危機的状況に陥ったことがある。1990年代に起きた、GMS各社の経営危機だ。そのあおりを受け、名岐アパレルの多くが淘汰された。

荒波を乗り越えた企業は、GMSに代わって台頭した低価格衣料チェーンや紳士服チェーンとの取引を増やした。その後は、市場が縮小する中でも、各社は自社の取引先との取り組みを強化、棲み分けるようにして生き残ってきた。

しかし、そうして何とか生き残ってきた名岐アパレルを、新型コロナが一気に追い詰めた。名岐アパレルには、ガゼールのようにピーク比で大幅に売り上げを落としていた企業は少なくなく、新型コロナが構造的な問題をあぶり出したともいえる。業界関係者は「名古屋のアパレルは商社機能が中心で、資金力もある企業が多い。だが、岐阜のアパレルはどこも厳しいのではないか」と指摘する。

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