埼玉・小川町メガソーラー、希少野生動物への懸念 予定地で絶滅危惧種のミゾゴイとサシバが繁殖

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新しい巣の下に散らばった卵の殻の破片(写真:鈴木邦彦氏提供)
ミゾゴイの親鳥。抱卵中とみられる(写真:小山正人氏提供)

この夏、猛禽類サシバの繁殖も再確認

野鳥調査チームは、春から夏にかけ、これまで確認できなかったミゾゴイの生息や繁殖の調査に集中した。サシバの調査は、ミゾゴイに先行して2020年に着手した。

サシバはタカ目タカ科に属する中型の鳥。日本で夏を過ごし、秋には大群で南に向かう。ピックイーという鳴き声で知られ、急降下してカエルやヘビを捕る。環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類、埼玉県レッドデータブックでは絶滅危惧IA類に分類されている。

鈴木さんらは、今シーズンもサシバの観察を続け、カメラに収めた。5月、事業予定地に隣接する広葉樹林には、木の上から下をうかがい、獲物を狙うサシバの成鳥がいた。別の事業予定地境界では、サシバの交尾を目撃した。「松の木に止まっていたんですね、サシバの成鳥が。メスだったんですが、そこにオスが飛んできて交尾するのを見ましたよ。別の日には、オスとメスが空高く旋回していました」(鈴木さん)

サシバが上空で旋回するのは、ディスプレーフライトと呼ばれ、一種の求愛行動という。なんともダイナミックな「婚活」だ。6月26日、鈴木さん夫妻は、別の場所で巣にいたひな鳥も撮影した。治美さんによると、ヒナは3羽いたが、3きょうだい一緒の写真は撮れなかったという。撮影地点は、事業予定地に近い木立の中だった。

事業予定地を中心とした広い範囲を行動圏とするサシバは3組のペアが確認されている。

サシバは、里山の猛禽類と呼ばれる。林と田畑を行き来し、急降下して獲物をつかむ。しかし、生息数減少は顕著だ。環境省が全国1000カ所以上で長期間続ける生物モニタリング調査によると、2006〜2018年には個体数が平均年4.2%で減少していた。昨年の日本鳥学会では、埼玉県の丘陵地でサシバの繁殖が見られた場所がこの50年の間に130カ所から5〜8カ所に減ったと示した研究が報告された。

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