消費者金融大手の前期営業収益は貸し付け減と利回り低下で2割減。今期も総量規制が懸念《スタンダード&プアーズの業界展望》

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 与信収縮は数年前に始まっていたとはいえ、総量規制の導入により、大手でも5割超の顧客が新たな借り入れを受けられなくなるとみられることから、利息返還請求や貸し倒れの増加圧力につながるのは間違いないだろう。今秋から年末にかけて、総量規制の影響度合いが明らかになってくるとみられることから、その動向を注視する。

営業貸付金残高や利回りの急激な低下を背景に営業収益が減少していることから、武富士では今期の利息返還のキャッシュアウトが営業収益を上回る可能性がある。自己資本や引当金の厚みが維持されている一方で、資金状況はいっそう厳しくなることが予想される。アイフルも、昨年12月にADR(裁判外紛争解決)が成立し、金融機関借り入れの返済猶予を受けたものの、資金状況は引き続き厳しく、大幅な資産圧縮を通じて資金繰りをつけていく計画である。両社の格付けにはこうした見通しをある程度織り込んでいるが、今後の資金繰り動向を引き続き注視する必要がある、と考えている。

アコムとプロミスの格付けは、各社に出資するメガバンク・グループから日常的に享受している直接・間接の恩恵や、緊急時の特別支援の可能性に引き続き支えられているが、アウトルックは「ネガティブ」である。多くの顧客が複数の消費者金融業者から借り入れており、業界の顧客基盤が重複しているため、1社の与信収縮は同業他社にとってもマイナス要因となる。各社の収益や資金状況への影響が強まり、スタンドアローン評価(銀行グループによる特別支援を加味する前の信用力評価)が引き下げられた場合には、格下げとなる可能性がある。

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