消費者金融大手の前期営業収益は貸し付け減と利回り低下で2割減。今期も総量規制が懸念《スタンダード&プアーズの業界展望》

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 前期の純損益は、09年3月期に利息返還関係の引当金の大幅積み増しを主因に赤字を計上した武富士とプロミスが黒字に回復。一方、09年3月期は黒字を確保していたアイフルとアコムは、それぞれ2951億円、72億円の赤字を計上した。アイフルは多額の引当金繰入額や事業再構築費用の計上、またアコムは利息返還損失引当金の繰り入れや、経営改革にかかわる特別損失計上が響いた。しかし、黒字を確保した2社を含め、営業貸付金減少の影響を除いたベースの営業キャッシュフロー(CF)は全社で赤字であり、今期も同CFの黒字回復は見込めないだろう。

各社にとって最大のコスト負担となっている利息返還金(元本充当額とキャッシュアウト額の合計)は、4社合計で5884億円と、09年3月期を12.5%程度下回る水準となった(表4)。ただし、これは09年3月期に未和解債権の処理を加速させていた武富士で反動減があったことによるところが大きく、他の3社ではほぼ09年3月期並みだった。

債務整理を受任する弁護士や司法書士の活動に関する指針が強化されたことにより、利息返還の請求件数は09年秋ごろから前年同月比が減少傾向で推移している会社もあるが、6月の総量規制導入以降に、利息返還請求や貸し倒れが再び増加するリスクがある。総量規制によって資金繰りが厳しくなった借り手がデフォルト、もしくは利息返還請求に至る規模や速度については、各社とも予測不能としている。

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