アディダス、本気アスリート向けデバイス投入 "カジュアルすぎないウェアラブル"を最速レポート

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スマートウォッチではないため、製品単体でトレーニングメニューの管理は行えず、また音声でコーチがペースアップ、ダウンなどを指示する機能も搭載されていない。こうした機能は、スマートフォンを通じて提供する点がSMART RUNとの大きな違いだ。

iOSとAndroidに対応した無償アプリケーションをダウンロードすると、スマートフォン上でトレーニングメニューを作成し、それをmiCoach FIT SMARTと同期。データは双方向に交換されるので、トレーニング結果の履歴管理もこのアプリケーションで行える。音楽やコーチの声は、スマートフォンにイヤホンをつなげば利用できる。

防水能力が高ければ・・・

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種目ごとのトレーニングアドバイスを受けながらメニューを作れる

今回の製品は必ずしもランナーだけに特化した製品ではなく、屋外を走らず、インドアテニスやトレーニングジムで運動をしている筆者のような利用者にも、有用な機能が増えた。またスマートフォンを活用することでビジュアル面でのアドバイスの幅が広がり、目的に応じた筋力トレーニングのアドバイスなども、有酸素運動の数値化以外に提供してくれた。クラウド側のサービスであるmiCoachサービスやアプリの進化で、いくらでも機能は増えていくだろう。アディダスはmiCoachユーザー向けにブログを提供するなど、対応製品を使うユーザーへの情報発信サービスも複合的に展開する。

つい最近、フィットネスに目覚めてしまった筆者がタイミングよくmiCoach FIT SMARTに触れたため、やや興奮気味に語ってしまったが、まだ試用はほんの数日。実際、ほんの数日使っただけでも役立つのだ。ただし不満点は、日常生活防水にとどまっている防水能力。筆者はジムの後に必ずセットで水泳をしているが、本製品を腕に巻いたままプールに入ることはできない。

しかし、それでも常にこの製品を腕に巻いてトレーニングしたいと思うのは、その奥が深いからにほかならない。専門性の高さ、本気度の高さが、そのまま奥深さにつながっている。カジュアルに生活の中のさまざまなことを数値化するウェアラブルデバイスとアプリの組み合わせも、入り口としては面白い。しかし、アディダスのような専門性を活かしたアプローチもまた、別ジャンルの製品として成長していきそうだ。

たとえば厳密にはウェアラブル製品ではないが、仏バボラが発売するスマートラケットや、ソニーが開発したテニスラケット用センサーなども、やはり”特定ジャンルに特化することで、愛好者が納得する情報をフィードバックする”製品と言える。アディダスのスマートサッカーボールも同様だ。センサー技術の発展により、その応用範囲は爆発的に広がっていく。今後も「こんな分野にも応用ができるかも?」と新たな気付きを得たメーカーが、新たなアプリケーションを発見するに違いない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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