横浜市長選、菅政権の命運をも左右する「大混戦」 再側近・小此木氏敗北なら「菅降ろし」加速へ

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これまでのメディアや各陣営の情勢調査などによると、5人の有力候補のうち、当初優位とされた小此木氏に肉迫、追い抜こうとしているのが、誘致反対の立憲民主など主要野党が支援する山中氏だ。誘致推進の林文子現市長(75)は小此木、山中両氏を激しく追っている。

菅首相が家族同然でもある小此木氏への全面支援を表明したことで、自民党横浜市議の8割以上(36人中30人)が同氏の支援に回った。その結果、選挙戦は終盤を迎えた段階で、小此木、山中両氏による事実上の与野党対決の構図となり、横浜誘致での菅首相の変節にコロナ批判も加わって、「菅首相の存在そのものが問われる大型地方選」(立憲幹部)となりつつある。

IRだけでなく、コロナ対応も争点に

有力候補の第一声をみても、4選を目指す林氏はIR推進を前面に打ち出し、「(私が出なければ)市民の選択肢がなくなってしまう。絶対後に引けない」と絶叫。対する小此木氏には河野太郎規制改革相ら多くの自民、公明両党有力議員が駆けつけ、「IR誘致をとりやめ、カーボンニュートラルに取り組む一番の街にしたい」と訴えた。

一方、山中氏はコロナ専門家の立場から「横浜でコロナの感染爆発が起こっているのは、林市長や菅政権が招いた結果だ」と強調。IRについては「構想自体に断固反対」と繰り返す。

さらに、松沢氏はIR反対の立場から「カジノ禁止条例をつくる」と主張し、田中氏はIR反対に加え、希望する保育園に入ることができない「保留児童」の解消などを掲げた。

前回の市長選で林氏を支援した自民党市連は自主投票だが、大多数は小此木氏を支持し、公明党も同調する。林氏はIR誘致推進派の地元経済界と一部自民市議が推し、山中氏は共産、社民両党からも支援を受ける。

有力候補が入り乱れる異例の激戦は、中盤になってIR誘致の可否だけでなく、首都圏の感染爆発を受けた政府や市のコロナ対応も大きな争点に浮上。とくに、菅首相の支援に頼る小此木氏は政府のコロナ対応への市民の不満の標的ともなり、防戦を強いられている。

本来、自民市連の大多数が支援し、菅首相の命を受けた自民党本部と公明党ががっちりと支援体制を組めば、小此木氏の当選は動かないというのが永田町の常識だった。しかし、IR誘致の旗振り役だった菅首相への不信感が小此木氏への逆風となっているのは明らかだ。

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