無印「売上高3兆円」へ食品が大変貌遂げるワケ 「毎日使う商品」の開発、価格見直しも本格化

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現在の無印良品は、売上高のおよそ半分を生活雑貨、約30%を衣服が占め、食品の構成比は15%程度にとどまる。そこで、その構成比を30%程度まで引き上げることを目標に、3~4年程前から食品強化が始まっていた。

4月から販売を開始したアイスクリーム(撮影:今井康一)

具体的には、「レトルトカレー」や「不揃いバウム(バームクーヘン)」など人気商品のラインナップを拡充。2017年秋からは一部店舗で青果の取り扱いを始めた。

さらに2018年9月からは冷凍食品の販売を開始。韓国風のりまき「キンパ」、みたらし団子、ミールキットなどの独自商品や、今年4月からはアイスクリームも加わった。コロナ禍では、アジア料理を手軽に作れるレトルト食品の手作りキットも人気だ。この3~4年の取り組みで、食品全体の商品数は約550点から約700点へ拡充した。

日配品など基本商材の開発を加速

店づくりにおいても食品強化店を出店している。2021年春には、食の「全部盛り」店として「無印良品 港南台バーズ」をオープン。食品スーパーチェーンのクイーンズ伊勢丹と協業して、精肉や鮮魚を展開。ほかにもナッツやドライフルーツなどの量り売り、贈答用のギフト、地元の食材を使ったレシピ開発や料理のライブ配信を行う「キッチンカウンター」なども設置している。

しかし「港南台店で機能面はかなりそろったが、物販の商品数はまだ足りない」(嶋崎氏)。これから無印良品が食分野で「消費者の日常生活を担う存在」になるためには、基本商材の品そろえが不可欠だ。現状では「毎日使うような食品のカテゴリーが手薄。将来的に商品数が2000~3000になるか完成形はわからないが、補完していく必要がある」(同)。

今後は牛乳や卵といった日配品やコメ、調味料などでも独自商品が登場することになりそうだ。食品スーパーのように1カテゴリーで多数のアイテムを展開していくわけではなく、カテゴリーごとにアイテム数は少なくても、無印良品らしい商品をそろえていく方針だ。

4月から飲料の容器をペットボトルから、リサイクル率の高いアルミ缶に変更した。食品では「ESG商品」を展開しやすい利点もある(撮影:今井康一)

国内では地方での出店が増えていくこともあり、価格帯の見直しも不可欠だ。例えばポテトチップスでは、フランス産のじゃがいもを使った税込み290円の商品が中心だが、「今後は1袋99円といった普通のポテトチップスの拡充が大事になる」(同)。すでに299円の菓子のバラエティパックなども展開しており、店舗での売れ行きは好調という。

もちろん原材料や製法など、理由があれば高い価格でも消費者は手に取るだろう。ただし、その値決めが適正で、買いやすい設定であることが重要だ。無印良品ではこれまでも「ずっと、良い値」として、基本商品の適正価格の見直しを行ってきたが、今後はそうした取り組みが加速していくことになる。

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