非ユーロ圏へも伝播 欧州危機の出口見えず

欧州財政危機は、いまだ序の口と思わせるほどの拡大ぶりを見せている。

ここにきて市場の動揺を助長しているのが非ユーロ圏への不安の伝播だ。東欧ハンガリーで政府幹部自身の“ギリシャ化”発言が浮上。ブルガリアでは欧州委員会が「統計の正確さに懸念あり」と調査団派遣の意向を表明した。さらに、格付け会社フィッチは「英国財政の課題はとてつもなく大きい」とトリプルAからの格下げを警告するような見解を発表した。いずれも非ユーロ圏だが、欧州連合(エU)27カ国の一員でユーロ加盟候補。結び付きは深い。

市場ではユーロにリンクされたハンガリーの通貨フォリントや、ブルガリアの通貨レフへの売り圧力が増大。ユーロ自体も弱地合いが続く。年内にも2002年以来の1ドル割れ、対円でも100円割れを予想する向きが増えている。

ギリシャの“デジャブ”

ハンガリーでは、約8年ぶりの政権交代を果たした与党フィデスの副党首が「ギリシャのような結末を回避するにはわずかなチャンスしかない」と、財政再建に否定的な発言をしたことで懸念が表面化。今年の財政赤字の対GDP比率は現状3・8%だが、実は7・5%になるとのうわさも広がった。まさにギリシャの“デジャブ”。その後、与党は発言の火消しに回ったが、市場の不安は晴れない。

国際決済銀行によれば、ハンガリー向けの銀行の投融資はオーストリア、ドイツで各4兆円近い残高がある。また同国の家計部門は、ユーロやスイスフランなど外貨建てローンが多い。景気悪化や通貨急落で、欧州金融機関の不良債権が増えるおそれがある。

ハンガリーはすでに08年、国際通貨基金(IMF)とEUから総額200億ユーロの支援を受けており、今のところ外貨流動性不足のリスクは小さい。国際金融情報センター欧州部の武村和正審議役は、「短期対外債務残高に対する外貨準備高は十分に積み上がっており、最近はIMFからの資金引き出しを『資金需要なし』の理由で見送ったほど」と指摘する。

とはいえ、もし大規模な隠れ債務などが発覚すれば、資本流出が本格化して金融不安も増幅される。IMF管理体制への疑念も深まる。「ハンガリーを見て思うのは、1年後のギリシャの姿。ギリシャも今後1年、緊縮財政を続けると、景気後退でさらなる苦境に追い込まれかねない」(みずほ総合研究所の中村政嗣シニアエコノミスト)。

ギリシャでは緊縮財政に対するデモが依然絶えない。逆にドイツでは、ギリシャ支援に対する国民の反発が強まり、憲法裁判所に訴えるケースも出てきた。危機の出口はまったく見えない。

(許斐健太、中村 稔 =週刊東洋経済2010年6月19日号)

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