【産業天気図・医薬品】米国での主力製品の特許切れと国内薬価改定が打撃、来春まで「雨」、中期の成長回復も不透明

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10年4月~9月 10年10月~11年3月

 医薬品業界は2011年3月まで1年通じて、「雨」が続く厳しい展望だ。米国での主力製品の特許失効と、国内での薬価マイナス改定がダブルパンチ。国内最大手の武田薬品工業<4502>など、製薬大手は本格的な業績の下降局面に入る。

武田は09年11月に米国で特許が切れた抗潰瘍薬への後発品参入の影響が通期にわたって続く。アステラスは免疫抑制剤に続いて、排尿改善薬への後発品参入が直撃。エーザイは最主力薬である認知症治療薬アリセプトの特許が11月に切れる。エーザイの見通しによれば、10~12年度にかけて米国でのアリセプトの売り上げ減少が年間1000億円規模に達し、11年3月期の業績の足を引っ張る。

来12年3月期に関しては、日本や米国での相次ぐ新薬投入で持ち直す見通しを3社とも描いている。だが、武田は最主力の糖尿病薬アクトスへの後発品参入で14年3月期が大底となる見通し。一方、第一三共は、米国での特許切れ製品がないうえ、最主力の降圧薬オルメテックが日米欧で引き続き拡大する。また、買収後の米国輸出禁止で深手を負ったインド子会社ランバクシーの業績復調が鮮明になっている。

製薬業界では、国内の薬価制度見直しいかんによって、12年度にもう一度大波が来る可能性がある。今年4月の薬価改定では「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」が設けられ、市場価格が維持されている希少性がある医薬品については、薬価引き下げが行われなかった。12年度は、今回試行的措置として導入された新薬加算の恒久化や、さらなる「深掘り」(特許切れ長期収載品の薬価の大幅引き下げなど、もう一段の制度改革)が行われる可能性がある。製薬業界にとっては、潜在的な業績下押し材料だ。

今回、武田などの日系大手は新薬創出加算の対象となる製品が少なく、薬価制度改革のメリットを得られなかった。それだけに国内では、新薬の開発ともに値崩れを起こさない価格政策が急務になっている。今後は外資による後発医薬品市場への本格参入も予想される。大手製薬企業にとっては、厳しい局面が続くことになりそうだ。
(岡田 広行=東洋経済オンライン)

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