(第34回)【変わる人事編】日本の教育に巣くった「ゆとり教育」の影響は10年続く

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●ゆとり教育の利点を生かす文化がない日本

 30年も迷走した初等・中等教育だが、ようやく改善の兆しが見えてきた。2008年2月15日に「脱・ゆとり教育」を鮮明にした学習指導要領が制定され、約40年ぶりに授業時間を増やす。そして、中学校の理科が33%増、数学が22%増など、学力向上に主眼を置いている。

 ただ注意しておきたいのは、ゆとり教育という理念自体が間違っていたとは言えないことだ。なぜなら、フィンランドのように日本のゆとり教育に似た教育システムがうまく機能し、世界一の学習・教育成果を上げている国があるからだ。ただ理念は正しくても、国によって文化は異なる。
 わたしの娘はフィンランドに住んでいたことがあり、KELA(永住市民権)を取得している。彼女が最初に驚いたのは、コンビニや自動販売機がまったくないことだったそうだ。日本のような消費文化と無縁な国なのだ。テレビも日本とは違う。「フィンランドでは日本のようなバラエティ番組はない。ニュースか解説、あるいは知識人の討論番組、クラシック演奏が多い」と話していた。そのような国の子どもなら、ゆとりを自分の学びの糧として使えるのかもしれない。

 しかし日本は、そのような国家ではない。ゆとりの時間は、テレビやゲーム、ケータイメールに使われてしまう。要するに日本という国には、ゆとり教育を生かす文化がなかったのだ。また、「教育」をめぐって日教組と教育委員会が政治的に対立している状態自体が教育にふさわしくない。

●受験によって決められる選択履修で教養は養えない

 ともかく新・学習指導要領が成立したことによって、学力低下問題が解決する可能性は生まれた。ただもう1つ問題がある。選択履修だ。
 2006年に起こった「世界史未履修問題」は、必修教科である世界史を教えていなかった高校が多数発覚した事件だった。なぜ履修させなかったかというと「受験しない教科に無駄な時間を使いたくない」という生徒や親の要望、そしてたぶん合格率を上げたいという高校の思惑があったからだ。

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