新内閣は、早急に信認に足る財政再建策と成長戦略を示せ

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 やっかいなのは、対GDP比債務残高が100%を超えてしまっているので、景気がよくなり、名目成長率が上昇して税収が増えても、長期金利の上昇により利払いも増加し、債務が拡大する、いわゆる財政の発散が起きてしまうことだ。

長期金利=名目成長率+リスクプレミアムなので、名目成長率が長期金利を上回っていかないと、財政は改善しない。しかも、民主党政権下での財政赤字拡大で、日本国債のリスクプレミアムが高まったことを債券アナリストたちがリポートしている。

辞任に追い込まれた鳩山由紀夫前首相は、4年間は消費税を上げないという公約の旗を降ろさなかったが、改革は待ったなしである。

IMFのジョン・リプスキー筆頭専務理事は対日4条協議(年1回加盟国に対して行う経済・金融に関する政策監視)を終えての記者会見で、「日本は11年には財政再建を開始し、消費税を徐々に引き上げていくべきだ」と述べ、「1年前と状況は異なっている。クレディビリティ(信頼性)が重要だ」と繰り返した。

対日協議の責任者であるシニアアドバイザーのジェームス・ゴードン氏は「たとえば、来年から消費税を段階的に15%へ引き上げ、成長に配慮して法人税を1%引き下げるといったプランで、10年後にはプライマリーバランス(基礎的財政収支)を若干のプラスに転換させるというようなスケジュール」と、具体的な例を挙げた。

この点について、東京大学の岩本康志教授は、「再建に必要な消費税率は想定の置き方によって変わるが、一つの考え方として合理的ではないか」とする。

みずほ証券の柴崎健チーフファイナンシャルアナリストは「駆け込み需要が発生しないという意味で段階的引き上げは妥当」という。

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