それでも「すき家」は店を出す 第三者委員会がビジネスモデルの限界を指摘

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小川会長とともに会見で説明した興津社長(写真左)

これに対し、事業会社ゼンショーの興津龍太郎社長は「適正な人員配置ができるように努力する」と繰り返した。「(ワンオペの)勤務を続けていく中で人を採用してワンオペを解消するのか」という質問に対しては「はい」と答えた。ワンオペは深夜時間帯の営業を休止すればすぐに解消することができる。ただ、小川会長いわく、深夜時間帯の売り上げは全体の4分の1を占めている。逆の言い方をすれば、営業休止は業績に及ぼす影響も大きい。

 ワタミは閉店、ゼンショーは出店

ゼンショーと同じく第三者委員会から提言を受けた、居酒屋チェーンを展開するワタミは、労働環境を改善するため、全店舗の1割にあたる60店の閉店を決めた。閉店によって1店あたりの社員数を増やすことで従業員の負担軽減を図ろうとしている。一方、小川会長の考え方は正反対だ。「2000店が1800店になっても問題は変わらない。それをしても一時的なこと。同じ構造であれば同じ問題が起きる。構造改革を行い、人的な基盤を強化すれば出店もできる」と、ワタミとは異なる路線で労務環境の改善に努める構えだ。2014年度も30出店を計画している(前期は85出店)。

創業者である小川会長がすき屋の第1号店を出店したのは1982年。そこから26年近くかけて2008年に約1000店に到達。その後は、急速な出店で2014年にはそれが約2000店と倍に拡大。いつの間にか、外食業界の国内最大手にのし上がった。

今回の調査で、ある経営幹部は「軽視されていたことが見直されるいい機会ととらえている。私たちも、この規模になったら、現実がこれではいけない」と答えたという。そして、委員会の報告書では、すき家を変えていこうという思いを持ったクルーや社員がいることも踏まえ、「経営幹部が強い決意と危機感をもって、こうした貴重な『人財』を最大限に活かす経営を実現していくことを強く願っている」と締めくくっている。

かつて、東洋経済のインタビューに小川会長は、「地球上の飢餓と貧困があるのはオレのせいだと思っている。撲滅できなければオレの責任」と述べていた。さらなる規模拡大を推し進めるのか。それとも労働環境の改善を最優先課題とするのか。そのバランスを見誤れば、今後の成長に思わぬ支障をきたしかねない。小川会長はこれまでになく難しいかじ取りを迫られている。

(撮影:梅谷秀司)

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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