菅新首相、長期政権へのハードル

菅新首相、長期政権へのハードル

塩田潮

 新政権の人事が固まりつつあるが、菅新首相の方針は参院選対策最優先だ。枝野幹事長起用では、「反小沢」姿勢と事業仕分けで高まった人気を当て込んでいるに違いない。

 権力欲旺盛の菅氏はいま長期政権を意識している。最大の関心事は政権維持だ。それには7月の参院選と9月30日任期満了の党代表選の乗り切りが必須条件となる。代表は2年任期で、鳩山元代表の残任期を務める形になっているが、すんなり再選と行くかどうか。

 首相交代でどん底は脱したものの、参院選では、単独過半数どころか、与党過半数も壁が高い。とはいえ、ピンチでの緊急登板だから、惨敗さえ回避すれば、参院選後の続投は固い。問題は代表選だ。与党で過半数維持なら、小沢陣営で対立候補擁立の動きがあっても、再選の可能性が高い。だが、過半数割れだと、情勢は不透明になる。

 「新ねじれ」の甘受か連立組み替えかという選択を迫られるが、組み替えの場合、野党切り崩しなどの荒業を駆使できるのは小沢氏だけという判断から急接近を図れば、無節操、無定見と批判を浴びるだろう。反対に「反小沢」を貫けば、過半数確保だけでなく、代表選再選もメドが立たず、短期政権に終わる可能性がある。菅首相は参院選で勝利を収めるしか自力での危機突破の道はない。枝野幹事長起用の本当の理由もそこにある。

 とはいえ、知謀家で切れ者の菅首相は、過半数割れや代表再選を見越して、「反小沢」と「隠れ親小沢」の二股膏薬に転じる可能性もある。菅氏は何事も自分でやらないと気が済まなくて、いつもイライラするので「イラ菅」と言われたが、最近は円熟味が増し、卒業したとの評もある。一方、状況対応主義で、変わり身が早く、「バル菅」と陰口をたたかれた。こちらは健在で、政権維持のためにいつも政局判断優先の舵取りとなるかもしれない。「首相は得意業で墓穴を掘る」という格言があるが、知謀家で切れ者という得意業で墓穴を掘ることがないようにご用心を。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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