「BMW4シリーズ」に乗ってみた! 3でもなく5でもない「偶数」モデルの実力

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驚いたのは、直4エンジンが、ほとんど分からないほどスムーズなことだ。ターボといえば、アクセルを踏んでからターボがかかるまでの時間(ターボラグ)を感じるのが一昔前の車だったが、それもほとんど感じさせない。ギアが8段に分かれた8速オートマチックトランスミッションとの最適制御のなせる技なのかもしれない。試しに広い道で思い切りアクセルを踏み込んでみたが、そのときだけ直4エンジンの荒々しさが少しだけ顔を覗かせた。

高級車=大排気量・多気筒エンジンではない?

もはや「高級車=大排気量・多気筒エンジン」という図式が崩れているのかもしれない。車をゆったり力強く走らせるのが高級車の魅力であり、そのために大きな排気量で多気筒のエンジンが必要だったが、ターボ、トランスミッションの組み合わせによるテクノロジーの進化で、小さな排気量のエンジンでも同等程度の性能が出せるようになっている。

「エンジンの排気量など、今までは大きくて立派なほど価値があるとされてきたが、もはやそうではない。日本の狭い道路も考えれば、むしろコンパクトで扱いやすいサイズのほうが求められているかもしれない」と御舘氏は語る。

欧州を中心に排ガス規制が厳しくなり、排気量の大きい車を手掛けるBMWなどドイツの高級車メーカーは、エンジンのダウンサイジング(小型化)を余儀なくされた。これを受けて各社が打ち出した策が、ターボの活用だ。排気量は落としつつも、ターボで出力を補っている。

しかし、2000cc級のエンジンにターボを積むというのは、もともと日本のお家芸みたいなものだった。代表的なのは三菱自動車の「ランサーエボリューション」シリーズや、富士重工業(スバル)の「インプレッサWRX」だ。これらのモデルは、かつて日本の自動車業界に280馬力をエンジンの上限とする自主規制があったときに、技術を熟成してどんどん性能を高めていった。

ただし、日本車がこのクラスの車で追求したのは、速く走るための高性能だった。パワーは大排気量の高級車並みだが、エンジンのフィーリングは荒々しく、スポーティーであり、ユーザーもそういう志向だった。トヨタ自動車や日産自動車などにも、排気量2000ccのターボモデルは存在したが、燃費や排ガスなどの環境性能が重視されていく中で、次々と消えてしまった。最近になって、トヨタや日産が高級車モデルにターボ付きのエンジンを復活させて始めているが、このターボによるダウンサイジングでは欧州メーカーが一歩先を行っている。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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