スカイマーク、A380解約騒動に続く不安 懸案事項は多額の違約金だけではない

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スカイマーク獲得の候補となる大手航空会社がいるとすればどこか。日本航空(JAL)は国土交通省が2012年8月に公表した「日本航空の企業再生への対応について」(通称「8月10日ペーパー」)によって、中期経営計画が終わる2016年度(2017年3月期)までは新規投資を抑制されており、身動きは取れないだろう。

全日本空輸(ANA)による救済はありえる。発着枠の扱いは国交省の裁量次第だが、ANAが救済するとしたら、スターフライヤー、AIRDO、スカイネットアジア航空といった、ほかの新興エアラインと結んでいる共同運航(コードシェア)などよりも一歩踏み込んだ関係となるかもしれない。

大穴は東南アジアのあの会社

スカイマークの先行きや、いかに(撮影:今井康一)

海外の航空会社はどうか。航空法では、外資が日本の航空会社に出資できるのは3分の1(33.3%、議決権ベース)までとしている。米国大手3社のうち、デルタ航空は関心を示しているかもしれない。

アメリカン航空はJALが加盟するワンワールド、ユナイテッド航空はANAが入るスターアライアンスという国際アライアンスを組んでおり、運航やマイレージなどで日本の航空会社と連携している。対して、デルタが属するスカイチームには日本のパートナーがいない。

大穴は、マレーシアを地盤とする東南アジア最大級のLCC、エアアジアグループである。ANAとの合弁を解消して、日本の国内線から一時撤退していたエアアジアは、楽天やノエビアなどと組み、新生エアアジア・ジャパンを設立。日本市場への再参入をもくろんでいる。将来的には羽田で発着枠の獲得に意欲を燃やしており、スカイマークを獲得することで羽田参入が実現すれば仰天のシナリオになる。

スカイマークが夢見た国際線の参入。それを叶えるための“背伸び”によって、逆に自らの首を絞めかねなくなっているのは、何とも皮肉である。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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