伊藤忠とタイ財閥、電撃提携の舞台裏 「巨人たちの握手」、真の狙いは中国市場の深掘り

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CPグループは中国では「正大集団」の名で知られ、外資系企業としてトップクラスの存在感を誇る。謝会長は文化大革命直後の1979年に養鶏ビジネスで中国に進出。外国企業の中国進出では第一陣となった。

また、CPグループは中国の保険大手である平安保険に16%出資しており、金融面でも潜在力が大きい。中国ではスーパーなど小売り事業も手掛けており、彼らが持つ流通や情報のネットワークは魅力的だ。

「大きな華人財閥の中国ビジネスはほとんどが不動産で、実業が主体なのはCPグループくらい」(伊藤忠幹部)。中国政府からの信頼も厚く、伊藤忠が中国事業を拡大させるうえで、頼れるパートナーだ。CPグループにも、伊藤忠のグローバルな調達網、販売網を利用して、中国での事業を一段と大きくしたいという狙いがある

ほかの商社もCPを狙っていた

華人系財閥はアジアに少なくないが、複数の大きな事業を束ねるコングロマリット型の財閥は数えるほど。その代表格であるCPグループと包括的な提携関係を持つことを狙う商社はほかにも存在した。それだけに、今後の伊藤忠の展開には注目が集まる。

中期的には中国だけではなく、ミャンマーなど、タイと接する国でのビジネス拡大も期待できよう。伊藤忠では、CPPへの投資は2016年度以降は年100億円を超える利益を産む、と想定している。

タイ企業に詳しい日本総合研究所の大泉啓一郎・上席主任研究員は、「伊藤忠にとって利益以上に重要なのは、新興国での事業展開の手法やネットワークをどれだけ吸収できるか」だとみる。かってない挑戦だが、これをやり遂げれば、日本企業の新たな可能性が開けるかもしれない。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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