スマホ新潮流、ゲームの次は教育アプリだ! フィンランドで広がる"エドテック"の有望度

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 フィンランドでは、教師の地位やプロ意識がとても高い。大学の教師養成コースの倍率は10倍以上で、教師になるには修士の学位が必須。「優秀な学生は弁護士か教師を目指す」(エサ・スオミネン教育相特別顧問)というほど尊敬されている職業だ。国は教育指導要領で教える内容の基本線を定めてはいるが、教材選びを含めた指導方法は教師に一任されている。だから、教師がよいと思った教材は、新しいものでもどんどん採用されるのだ。

 高まる「プログラミング熱」

このような精鋭教師陣の存在もあり、フィンランドは極めて高い教育水準を維持。経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)でも、上位の常連となっている。人口540万人で天然資源も乏しい小国だからこそ、大学院まで最高の教育を無料で提供し、国際競争力を高めようとする姿勢が見て取れる。

世界初のプログラミング選手権には92カ国4000人が参加。開場は熱気に包まれた

フィンランドが今後の教育の重点分野として打ち出したのが、IT産業にもかかわるコンピュータープログラミングだ。フィンランドでは「ITが生活を取り巻くようになったため、全ての子どもにソフトウエアについて基礎的なことを学ぶ機会を与える」(スオミネン氏)との方針の下、プログラミングを16年から義務教育に含めることが決定した。日本政府も成長戦略の中で、同様の方針を検討している。

民間レベルでも、プログラミングを盛り上げる大きなイベントが開催されている。今年6月10日、スーパーセルと現地ソフトウエア会社のリアクター主催で、世界初のプログラミング世界選手権「ハローワールドオープン2014」の決勝がヘルシンキで行われた。92カ国4000人以上が参加した予選を勝ち抜いた8チームが、人工知能を搭載したバーチャルの車を設計し、レーシングゲームで覇を競った。

プログラミングというと密室にこもって作業する暗いイメージがある。しかしこの大会の空気は、ステージ上でパソコンを操作するプログラマーに会場に詰めかけた観衆から熱烈な応援が寄せられるという、オープンで熱気のこもったもの。ポーランドのチームが優勝した瞬間には、割れんばかりの歓声が沸き起こった。このような、プログラミングのイメージを変える契機になりうるイベントが、フィンランドから生まれている。

教育制度や産業構造が違うため、フィンランドは日本の直接のモデルにはならないかもしれない。しかし、教育系ゲームの活用やプログラミング教育の将来を考えるうえで、フィンランドが目の離せない「エドテック先進国」であることは間違いない。
 

長谷川 愛 東洋経済 記者
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